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木の葉芽吹きて大樹為す
青葉時代・終末の谷編<前編>
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だ、まれ……!」

 遠のく意識をたぐり寄せて、霞む視界に目を凝らす。
 そうすれば、白く成りつつある世界に真っ赤な光が見えた。

「――うぅ、あ。あぁぁぁああっ!!」
「……っ!?」

 右手で掴んだそれを赤い光へと向ける。
 体に掛かっていた重みが外れて、一気に私の身はマダラから解放された。

「っはぁ、はぁ、ひゅ……っ! げほっ、ごほ!」
「あのまま抵抗せずにいれば楽に死ねたものを……」

 憎々し気にマダラが呟いているが、それどころではない。

 求めていた酸素が供給され、脳と全身が歓喜の声を上げていた。
 ふらつく足を叱咤して、必死に地面に立ち上がる。
 焦点の合わない瞳に力を込めて敵の姿を探せば、赤い目がじっと私を見つめていた。

「己の武器に救われたか……。悪運が強い」
「げほっ、げほっ! 悪運が強くて……結構! そう簡単に、くたばって堪るか!」

 私が手にしたのは、マダラとの激戦の最中に周囲に突き刺さっていたクナイの一本だった。
 金属の確かな手触りに、自らが九死に一生を得た事を思い知る。締め上げられた首が痛んだ。

「……っあ、はぁ」

 ふらふらとする足下に舌打ちしながらも、何とかして視界を固定させる。
 ――かつて無い程最悪な気分だ。
 今までにもひやりとする場面には何度か襲われた事はあったが、死をここまで身近に感じたのは初陣以来ではないだろうか。

「――木、遁・樹縛……栄、葬!」
「技の切れが落ちているな。この程度で……!」

 勿論、その程度でマダラを倒せるとは思っていない。これはただの一段階だ。
 避けるためにマダラが飛び退いた先で、前々から仕掛けていたブービートラップの起爆札を一気に発動させる。

 万華鏡が輝いて、瞬時に紫の炎がマダラを包む。
 対・マダラとの戦いに置いて、最大の障壁と成るのは彼が纏う攻防一帯の絶対防壁・須佐乃乎だ。
 完成形では無いとは言え、それを崩さない限りマダラへの決定打は当てられない。

 未だに素手での須佐能乎の破壊には成功した事はない。以前、皹を入れたきりだ。
 おまけに私も疲弊しているから、これ以上大技を使用する事でのチャクラの浪費を行えない。
 ――だからこそ、敢えて素手での破壊に挑むしかない。

 意を決して、マダラを睨む。

「――その鎧の中から、出て来てもらうぞ! うちはマダラ!!」

 僅かに残っている木遁の樹木の波を操って、私も前へと踏み出す。
 二面四腕の鬼が奔る木々を薙ぎ払う中を、ただ真っ直ぐにマダラ目がけて走って手に力を込める。

 ――――そしてそのまま、紫の炎を纏う鎧へと拳を打ち込んだ。
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