第六話 幼児期E
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僕のこと迎えに来てくれないからじゃないですか! 身体があったら本気で泣いてますよ!?』
「あ、あはははは。つい」
『ついじゃないですよ! どうせ僕のことなんて忘れてたのでしょ!? なんで僕のますたーはこんなんなのですかぁーー!?』
「こんなん言うなや」
いやぁ、相変わらずだった。あと今真夜中だからね。もうちょっと声のトーン落とそうぜ、コーラル。というかほんとに若干涙声になっていませんか。お前インテリジェントデバイスだよな。
「それより……ばっちり撮れてる?」
『……はいはい撮れていますよ。もうこれ以上ないぐらいにばっちりです』
コーラルの報告に俺は思わず顔をほころばせた。
俺は昔からリリカル物語を読んでいて、インテリジェントデバイスについてある考えを浮かべたことがあった。見た目は小さな宝石で、映像記録も取れて、さらに自律行動も取れる。そう、これはもう……最高の盗聴器だろうと! さすがにコーラルには直に言わないけどね。
「でもさすがコーラル。お前にまかせて正解だった」
『ますたーぐらいですよ、デバイスの映像記録をこんなことに使うの。それに大変だったのですよ。見つからないように必死に隠れたり、掃除機に吸いこまれそうになったり、……ソウジキコワイ』
「えっと、うん。まじごめん。掃除機怖かったな」
デバイスを慰めるマスター。いいのか、これで。というかコーラルの奴、『隠密スキル』まで身につけていそうだ。本当にいいのか、これで。
あれからコーラルを連れて、家の寝室に転移した。時刻はそろそろ0時をまわりそうだった。収穫はあったし、明日も早いからもう寝ないとな。
『ますたー、記録はどうするのですか?』
「うーん、使わないならそれが一番なんだけど……もしもの時に使えればな」
『わかりました。あ、帰ってきたみたいですよ』
「え、まじ?」
コーラルは感知に関しては非常に優秀だ。機械の力と俺の魔力を使って、常にサーチしてくれているからだ。放浪によく出掛ける俺たちのために組み込まれたシステムであり、俺も信頼している。
それに、耳かきやはさみが行方不明になった時とかめっちゃ大活躍! 僕ってデバイスですよね…ダウジングじゃないですよね……、と哀愁漂う時がたまにあるらしいが。
とりあえず、俺は寝室からリビングの様子をこっそりうかがうことにした。アリシアと一緒に書いた手紙。母さんは喜んでくれるだろうか、喜んでくれたらいいな。そんな風に思いながら、覗いた俺の目に映ったのは、涙を流す母さんの姿だった。
「ううん。お母さんこそ…ありがとう。……本当に、ありがとう」
小さくかすれた声。今にも消えてしまいそうなぐらいに呟かれた言葉は、はっきりと俺の耳に入った。
母
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