第六話 幼児期E
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の電気も消えており、雨も止んでいるため静寂だけがそこにあった。
『おかえりなさい、お母さん!』
『おかえり、母さん。お仕事お疲れ様』
今までなら子どもたちの元気な声が聞こえていた。時々廊下を走ってお出迎えに来るアリシアに、走ったらこけちゃうわよ、と注意しながらもぎゅっと抱きしめていた。それを微笑ましそうに見ながら、アルヴィンが私の荷物を部屋まで運んでくれていた。
しかし、これからそんな時間がもっと減っていく。プレシアは重い足取りでリビングに向かい、明かりをつける。台所には今日の晩御飯のお皿がきれいに並べられており、子どもたちがちゃんと食事をとったことがわかった。
「あら?」
荷物を置こうとテーブルに視線をやると、出掛けた時には何もなかったテーブルの上に、1枚の画用紙が置いてあった。プレシアは子どもたちが片付け忘れたのかと思いながら、紙を覗きこんだ。
彼女はそこに書かれていた内容に最初は呆けてしまった。短い文とおそらく黒髪の女の人の絵と妙にリアルな茶色い動物が大量に描きこまれている画用紙。正直かなりシュールすぎる。
それでもプレシアは理解していくにつれ、その瞳に涙が溢れていた。口元を手で覆いながら、何度もその文に目を通した。
『おかえり』
『むりしないでね』
『ごはんおいしかった』
『いつもありがとう』
彼女は嗚咽を漏らさないように、静かに涙を流し続けた。
******
「母さん、やっぱり遅いな」
アリシアも寝ちゃったし、今がチャンスかね。時刻は23時で、子どもならもうとっくに寝ている時間だ。俺も気を抜いたら寝ちゃいそうだけど、頬をパチンッと1回叩き覚醒する。
俺に出来ることをすると決めた。正直俺はそこまで頭がいいわけでもないし、すごい特技があるわけでもない。変なところで特徴はあるとか、頭がぶっ飛んでいるとか、失礼なことを言われたことはあるけど。
それでも、精一杯頑張ろう。このまま流されるだけなんてごめんだ。俺は目を閉じてイメージする。向かうはヒュードラの開発局のとある一室。ずいぶん前に1度訪れたことのある場所であり、俺が仕掛けを行った場所だ。
「よっと」
俺は真夜中の本部の部屋に転移した。視界は真っ暗で歩くことも困難だ。明かりを付けるわけにもいかないが、そこは別に問題ない。俺の目的は『お迎え』なんだから。
「おーい、コーラルいるかー?」
『……ますたー。遅すぎますよ』
暗い部屋の隅で、緑に点滅する光が現れる。光はふよふよと浮かび上がり、俺に向かって移動して来た。わかってるけど、怖ッ! もっと元気よく飛んでこいよ。
「なんか幽霊みたいだぞ」
『ますたーが……ますたーが全然
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