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少女1人>リリカルマジカル
第六話 幼児期E
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炉『ヒュードラ』。その開発局の一室に3人の人間がいた。

 1人は焦燥を隠すこともなく、相手側の提案に反発する女性――プレシア・テスタロッサ。ヒュードラの設計主任である彼女は、納得がいかないと声を張り上げた。

「なにか不服かね、テスタロッサ主任。これは上層部全員の意見だ。ヒュードラの完成を急がせる必要がある」

 だが、相手の男性はそれに一切感情を向けることもなく、淡々と告げる。彼はプレシアに目を向けることもなく、自身の手元にある書類を眺めている。言葉と態度から明らかな拒絶がうかがえた。

「……ッ! 不服とか、そういう問題ではありません。今でさえ駆動炉の設計を急がせているんです。これ以上の負荷は、安全設計に不備を起こしてしまいます」
「ずいぶん弱気ですね。大魔導師とまで言われ、その若さで中央開発局の局長を任されているお方が」

 もう1人傍らで佇んでいた男性が嘲笑する。プレシアは一瞬その男性に視線を寄こしたが、すぐに外した。彼女の表情には何もうつさない。冷静さを失えば、相手の思うつぼだと理解しているからだ。

「私は主任として、1人の開発者として進言しているだけです。駆動炉の要であるエネルギーを安定させるためには、数年は確実にかかります。それを2年以内で完成させろなど、不可能です」

 断言する。プレシアがこの開発に携わるようになって1年。いくら考えても完成など夢のまた夢だ。ただでさえ、今の現状だけでもギリギリだというのに。彼女は静かに拳を握りしめる。


 すべてはプレシアが、アレクトロ社の次元航行エネルギー駆動炉『ヒュードラ』の設計主任に抜擢されたことが始まりだった。

 この開発にはもともと前任者が存在していた。だが、かなりの不祥事と問題を起こしたことで職を追われ、その後釜として引き継がされたのがプレシアたちだった。現上層部のメンバーは前任者が開発をしていた頃からおり、しかも引き継ぎ用のデータにはかなりの穴があった。

 その穴を埋めるための研究と膨大な事務処理、そして上層部の勝手な都合で決められていくスケジュール。何人もの研究者が体調を崩し、上層部のやり方に嫌気が差しやめていった。さらに残った者たちで抜けたメンバー分の事後処理を行い、開発する必要がある。

 そんな状況下で、さらに時間を切り詰めるなど正気の沙汰ではない。駆動炉の安全性の面からみても危険すぎる。それにも関わらず、上層部は効率を重視し、圧力をかけてくる。


「君の意見など聞いていない。時間は有限だ。こんなところで喚いている暇があるのなら、至急仕事に戻りなさい」
「ですから」
「そういえばあなたには2人もお子さんがいましたか。大変ですね。しかしヒュードラはこの世界のためになる有用な技術です。そんなことのために使える時間があるの
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