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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#51 "Members of Lagoon & Co."
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止めないんだね。やっぱり」
俺の言葉を遮るように、静かな
声音
(
こわね
)
でロックが面白え事を言ってくる。
どうやらこの日本人は最後まで俺を飽きさせねえでいてくれるようだ。
「ロック。ウチはあくまで単なる運び屋だぜ。
たまにゃあ御法に触れる事もするけどよ。
一度足を踏み入れたら逃がさねえ、なんて物騒な決まりがあるわけじゃねえんだ。
ここに居てえなら居りゃあいい。
辞めて、出て行きてえってんならそうすりゃあいい。
その辺はお前さんの自由に決めて良いことさ」
テーブルの上にカップを置きつつ、そうロックに答えてやる。
背中は向けたままだったが別に構わんだろう。
ロックも、何か理由があるのか知らねえが、部屋に入ろうとはしてこねえしな。
「………ねえ、ダッチ。
それは俺相手じゃなくてもそう言うの?
ベニーや、レヴィや、ゼ…」
一旦言葉を切ったか、一泊の間を空けた後ロックが再び話を続ける。
変わらず綺麗な発音のままで。
「他の誰であっても同じ事をアンタは言うのか?
出ていきたければそうしろ。
去るのも残るのもお前の自由だと。
本当に?
本当にそうなの?
アンタにとって、ラグーン商会にとって、俺っていう人間は一体どんな存在だったの?
ただの気紛れで拾った日本人は、やっぱりアンタ達の仲間にはなれなかったの?
そもそも何で俺がこの街に残る事を認めてくれたの?
アイツが、」
「………」
ロックの言葉に若干の震えが混ざる。
いつもみてえに賑やかな時なら気付かねえんだろうが、生憎今のこの部屋にゃあロックと俺の二人だけ。
街も静まり返ってる中で聞こえてくんなあ、天井のファンが空気を掻き回す音だけ。
ロックはその声に震えと微かな湿り気を帯びさせながら
晒
(
さら
)
け続けてゆく。
長く胸の内に秘めていたであろう自身の思いを。
「アイツが、そう頼んだから?
俺を残してくれるようにと。
………俺、ずっと思ってた。
ロアナプラに残ったのは自分の意志なんだと。
この街に残る事を決めたのは自分自身だと。
だから頑張ろうって思った。
あの時、日本の上司が俺を見捨てたあの時。
岡島録郎は死んだんだ。岡島録郎は死んで、いま此処に立っているのはロックという悪党見習いの男なんだと。
そう決めた。そう決めるべきだと思ったんだ。そうじゃなきゃ辛すぎるから。そうしなければ生きていけないと思ったから。
ロックって名前。くれたのはアンタだったよね、ダッチ。
ありがとう。本当に、ありがとう」
「………」
『人は
賽子
(
ダイス
)
と同じで、自らを人生へと投げ込む』
ロックの言葉を聞いている最中、
サルトル
(
さる老哲学者
)
の言葉がふと脳裏に浮
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