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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#50 "melancholy of subーcast"
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でしょうか。
私がどれ程、あの一日の半分もの時間に渡り、空に居座るふてぶてしい輩を憎んでいるかという事を。
あやつが天にデンとその大きな、かつ忌々しい姿を晒している限り、私は安心して道を歩くなぞとても出来は致しません。
その際には迷う事なくこの芳香漂う我が麗しの仕事場で時を過ごす訳でございます。
以上。私がこの場で一晩を過ごす理由を述べさせていただきました。
ご清聴ありがとうございました。
「………」
いくら一人とはいえ私は一体何をやっているのか………
駄目だわ、本当に鬱がやって来そう。
軽く鼻から息を吐き出しながら立ち上がった後、首を捻って近くのテーブルの上に置いておいた時計で時間を確認する。
16時58分、か。
日没までにはまだ時間がある。
既にその魔力は衰えたといえども我が天敵は未だ健在。
本格的に動くのはもう少し先、か。
一先ずシャワーでも浴びるとしよう。
そう思い、背中のファスナーに手を伸ばしゆっくりと引き下ろす。
パサリと音を立て床に落ちた服を気にする事もなく、下着姿のままシャワー室に向かう私。
ああ、考えてみれば普段着であるドレスのまま死体の始末をしたのは初めてかもしれない。
此処ではエプロン着用がデフォルト。
それもあって私の素顔など殆どの住人は知らず、気楽に過ごしていたのだけれども。
「………」
シャワーヘッドから流れる水の量と温度を調整しながら考えるのは、最近知り合った一人の男。
それから以前から顔と名前くらいは知っていた一人の女。
男の方は何だか良く分からない奴ではある。
昨夜も見ず知らずの子供を庇って撃たれたばかりだが、防弾ベストのお陰で傷一つ負っていないという奴だ。
おまけにいい年齢のくせにゲーム好きで、しかも負けず嫌いときている。
私も嫌いではないが、さすがに10時間ぶっ通しは勘弁願いたい。
一応仕事でこの街に来たのであろうに本当に大丈夫なのだろうか、あれで。
何でも、どんな現場でも傷一つ負わずに生還してくる運だけは持ち合わせているそうだが。
全く相棒たる彼女の苦労もさぞ絶えない事だろう。
調整の終わったシャワーから出る水流に身を浸しながら、黒髪も艶やかな双刀遣いの顔を思い浮かべる。
昨夜別れ間際に見た彼女の表情を。
「………」
勘違いしてはいけないのは、彼と彼女の問題に私は口を挟めないという事。
私はそういう立場には居ないという事。
確かにほんの短い時ではあるが私と彼らは共に時を過ごした。
しかもその大半は互いの仕事に何も関わらない時間を、だ。
正直に言えば彼らと共に過ごした時間はとても楽しく、そして貴重なものだった
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