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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#50 "melancholy of subーcast"
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のまま我が愛しき仕事場で一夜を過ごしたのであります。

一応私にも自宅、と申しますか寝床たるべき部屋は確保しておるのではございますが、仕事が持ち込まれた日などはこうしてこの仕事場で一夜を過ごす事も多うございます。

……どなた様もそんな勘違いは成されぬと思われますが念のため
(私の過ごしております"此方の世界"では極めて重要なのであります。
この念のためというやつが)申し上げておきますれば、死者を悼んで祈りを捧げているわけでも、罪深い己の所業を悔いている為でもございません。
ただ単に家に帰るのが面倒だからでございます。
何しろ我が自宅と仕事場は結構距離が離れていたりするのですよ、これがまた。

無論所詮は狭いタイの田舎街。
徒歩でも高々三十分といったところでありましょうか。

その位ならキリキリ歩け、と仰られる向きもあろうかと思われます。
ええ、それは確かに仰る通り。その通り。何の反論も出来ませぬ、と言いたいところなのですが………

問題は距離などではなく、時刻こそが問題なのであります。

この件に関しましても先程同様誤解される方はいらっしゃらないとは思いますが、念のために申し上げておきます。
何も私は世の婦女子の方々がご心配されているような真夜中に独りで道を歩くのが不安だ、などといった類いの不安を抱えている訳ではございません。
確かに私がこの街に居着いた頃には、もう既に此処は見事なまでに"ロアナプラ"でございました。
(意味は通じておりますでしょうか? 些か不安を感じながら話を続けてまいります)

か弱き女の身一つで真夜中に道を歩くには世界で最も相応しくない街ではあるでしょう。 (そう言えば聞いた話ですが、日本では未成年の女子でも平気で一人夜道を行かれるとか。 それだけ平和な国なのでしょう。私は一生足を踏み入れる事は無いでしょうね)

ですが、まあそこはそれ。
仮に私を襲おうなどという不埒者が現れましたら、夜のロアナプラにチェーンソーの爆音が鳴り響くだけの事。
後はまあ、"中身"が気に入りましたらお持ち帰り。
気に入らなければ同業者の方へ仕事のお裾分け。
それだけの事でございます。

では一体何が問題なのか?

簡潔に申し上げれば夜中に帰るのが問題なのではなく、朝に帰るのが問題なのです。

私の本業たる死体始末のお仕事はこれで中々時間が掛かるもの。
更に言えばそもそも死体が生まれる(以前にも申し上げましたが、やはりおかしな表現ではありますね、これ)のもやはり夜、それも真夜中が圧倒的に多い訳でございます。
しかも大量に生まれる事もままある訳でございまして、そうなれば仕事が終わるのは最早朝方、太陽が昇り切った後になるわけです。

記憶力の良い方なら覚えておいで
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