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木の葉芽吹きて大樹為す
青葉時代・襲撃編<前編>
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お前がここにいるんだ」

 錆色の満月に照らされ、煌々と輝く朱金色の毛並み。
 堂々たる巨躯より生える九本の尾は荒々しく蠢き、凶悪な牙が並ぶ口元から涎が滴り落ちる。
 筆で一本引いたような黒い目元に映える鮮血の瞳は焦点を失い、ただただ標的を求めて彷徨っていた。

『――グルルゥゥ……』

 かつて私が見惚れたあの圧倒的なまでの美しさは疾うに無く、ただただ荒ぶるだけの獣がそこにいた。

「――どうして……なんだ、九喇嘛」
『ウオォォォォオ!!』

 ――問いかけに対する答えなど、ある筈がない。
 頭では分かっていても、私はその場から動く事が出来なかった。

*****

「九尾だーー!! 九尾が出たぞーー!?」

 里のあちこちから上がる悲鳴に、惚けていた意識が我に返る。
 こんな事をしている場合ではない。
 とにかく九喇嘛がどうして木の葉の里を襲ったのかは分からないが、私は火影として皆を守る責務がある。
 ――それを忘れてはならない。

『グゥォォォォオオ!!』

 巨大な尾が一振りして里の建物を叩き潰そうとする。
 あんな勢いで振るわれた一撃をまともに受ければ、建物どころか山だって崩壊するだろう。

「――木遁・樹界降誕! 土遁・地動核の術!」

 木遁の術で九尾の体を縛り上げ、大地へとチャクラを流し込んで九喇嘛がいる地面を持ち上げる。
 これで一旦の隔離は済んだが、事がそう簡単に済む筈が無い。

「何をしている、避難を急がせろ!!」
「は、はっ!!」

 そうしてから呆然と空を見上げている木の葉の忍び達を一喝して、我に返らせる。
 元々が優秀な彼らの事だ。警報を前もって鳴らしておいたお蔭もあって、避難の方も滞り無く進むだろう。

「九喇嘛! なんで木の葉に来たんだ!? ――おい、聞こえてるのか!?」

 自らを戒める木遁の縛りを噛み砕き、爪で引き裂く事で破壊する九喇嘛へと必死に呼びかけるが、返ってくるのは唸り声ばかり。

 ――可笑しい。幾ら破壊衝動に支配されているとはいえ、ここまで自我の欠片も無いだなんて、まるで操られているみたいだ。
 でも、尾獣の中でも最強と言われ【天災】と恐れられている九喇嘛の狐を操る者がこの世に存在するのか? だとすれば、それは一体……?

 地動核で持ち上げた地面の上に再び木遁の樹界降誕を使用して、九喇嘛の巨体を里の外へと弾き飛ばす。
 そのまま押し出された九喇嘛の方へと向かう途中、嫌な予感がしてその場から飛び退いた。

 ――判断は正解だった。

 先程まで私がいた場所に向かって放たれた、轟々と燃え盛る火球。
 見る見る内にその場にあった建物を焼き尽くす業火を背景に、その場に降り立った人影。
 その姿に私だけでなく、
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