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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
chapter 05 : beginning of the end
#48 "Roanapur summit"
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。
私に私の都合があるように彼等には彼等の都合がある。
戦いを回避せんと努めるならそれも良し。
それがマフィア流だというなら、それを貫き通せばいい。
私には関係ない。
私は私のやるべき事をやる。私と、私の部下の為に。
「同士軍曹。今朝届いた"贈り物"だが、贈り主については何か分かったか」
葉巻を指に挟みながら隣に座るボリスに確認する。
今朝、連絡会に出向くまえに事務所に届けられた"贈り物"とその贈り主について。
「申し訳ありません。大尉殿。
現在のところ、まだ部下からは報告は上がってきておりません」
返答は予想の通り。
何か分かっていたなら、私が訊ねる前に報告があっただろう。
「そうか。
あれほどの丁寧な贈り物を頂いたのだ。返礼をせぬという訳にもいくまい。
何としても突き止めろ」
はっ。
ボリスからの返答を受け止め再び葉巻をくわえる。
………口中に苦いものを感じる。
葉巻の味が変わるのは、唯一この時だけだ。
あの
"共同墓地"
(
クラードヴィシャ
)
からもう何年も経ったがそれだけは変わらない。
今朝の"贈り物"は七人目、或いは八人目に当たるのか。
まさか
二人一組
(
ツーマンセル
)
を組ませていた私の部下が殺られるとはな。
そうしておけば殺られる筈はない。そう考えていた私の失態だ。
驕慢は身を滅ぼす。
上に立つ者が腐れば下にいるものも同様に腐ってゆく。魂に刻むべき教訓だ。
だが、もうこれ以上好きにはさせん。
夜の闇に隠れて舞い踊れるのは昨夜までだ。
ロアナプラは私の戦場だ。
ここからは私の好きなようにやらせてもらう。そうだ。ここから先は、な。
「大尉殿。事務所へ到着いたしました」
車は『ブーゲンビリア貿易』の表札を掲げたビルの前で停まる。
葉巻を灰皿に押し潰して消した後、ゆっくり立ち上がり車外へと足を踏み出す。
ボリスを後方に従えながらビルへと入っていく私。
その口許には隠しきれぬ笑みが。
そして右の眼にはまだ見ぬ敵への憎悪が浮かんでいた事だろう。
鏡など見ずとも、私はそう確信する事が出来た。
闘争への期待に背を押されるように、私は早足でビルの中を進んでいくのだった………
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