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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
chapter 05 : beginning of the end
#48 "Roanapur summit"
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ワの女首領に会ったのは、当然ながら連絡会という場だった。
初対面の印象はとにかく最悪。
何せカルテルのロアナプラ支部がホテル・モスクワに潰されてすぐの時だ。
一応組織の上同士で話は着けているとはいえ、油断出来るわけも和やかに付き合えるわけもねえ。
この世界は舐められたらおしまい。
況して一度味噌が着いちまってる手前、余計に気を張っていかなきゃいけねえ。
そう思って臨んだ連絡会。
俺は(つら)の上に笑顔こそ浮かべながら、眼だけには力を込めつつバラライカという当面の仮想敵を観察し続けた。

………確かその時の連絡会は一時間程度だったと思う。
解散した後に帰りの車ん中で、俺はただひたすら会ったばかりのロシア女の事を考えていた。
一見その女は典型的な糞アマに思えた。
人に命令する事に慣れてる、男を見下す事に喜びを見出だすタイプのアマだ。
口許にはいつでも冷笑を浮かべ、俺らを馬鹿にしてやがる。
テメエは元軍人さまの白人さま。
この糞ったれな街に巣食うマフィア供ん中でも最悪とも言われてる力の持ち主。
ノコノコ南米からやって来た俺なんぞ、道端に(うずくま)ってる犬っコロ程度にしか思っていやがらねえ。
奴の左側の、綺麗なままの面にはそう書いてある。

少なくとも当時の俺にはそう思えた。

"その事"に気付いたのはいつだったか。
何の感情も浮かべていない。
いや、浮かべる事が出来ない。 火傷顔(フライ・フェイス)の由来ともなったひきつった皮膚。
そこにこそバラライカという女の本質が眠っているという事に気付いたのは。

「アブレーゴ、お前んとこは大丈夫なのか?被害は出てねえのか」

ヴェロッキオに話し掛けられ、意識が裡から外へと向かう。
時計も見てねえからどれくらい時間が経ったかは分からねえ。
まあ大して経っちゃいねえんだろうが。

「おい、アブレーゴ。聞いてんのか?」

「ああ、すまねえ。俺んとこにゃ被害は出てねえ。悪いが大した情報もねえ」

正面のヴェロッキオに答えを返しながら、俺は不思議な確信を覚えていた。
バラライカはこのまま黙ったままじゃいねえ。
俺からは見えねえ側に何か隠し持ってやがるに違いねえ。
今日が、そして今回の一件がどうなるかは分からねえが中心にいるのはこの女だ。
どんな時だってそうなんだ。
この街のど真ん中にゃあ、いつだってこの女がいる。
俺らはこの女が何か始めてから漸く動き出せる。
どうやったってそうなんだよ………
















【11月3日 PM1:23】

[連絡会開始より57分経過]

Side ヴェロッキオ

「ハッタリだ!あんなもん
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