暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
chapter 05 : beginning of the end
#48 "Roanapur summit"
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

俺にもよ〜く分かるようにな!
その薄汚え顔面の真ん中にあるケツの穴より臭え穴をはっきり、ゆっくり、大きく動かしてよ!」

ヴェロッキオが此方に向けて一喝した後、再びバラライカに向き直り、ゆっくりとした発音で要求を突き付ける。
要求、か。
確かにヴェロッキオの分厚い唇から強い調子で発せられた言葉は、要求と呼べるものかもしれない。
彼の肩と言葉の震えに敢えて目を瞑ればだが。

「………」

アブレーゴは無言。
こちらは肩どころか全身が震えている。
南国生まれの彼には北国の女の言葉は冷たすぎるのかもな。

「お望みとあれば聞かせてやるよ。ヴェロッキオ。張もアブレーゴも良く聞いておけ」

「………」

「………」

「………」

俺の正面に立つバラライカが再び口を開く。
そして黙り込む俺達三人。
やれやれ。
いよいよ女王陛下のお言葉を待つ従者という図式だな、これは。
女を仰ぎ見るというのは初めての経験だが、何とまあ……

人生には知らない事が多い方が楽しめる。
全く至言だ。
アイツからこの言葉を聞いたのは、さてどんな状況だったか。

益体もない事を考える俺を気にする風もなく、バラライカは先刻の発言を繰り返す。

俺達三人に向けて降り下ろされた氷の刃。
或いはロアナプラ(この街)をまとめて吹き飛ばす焼夷弾のような一撃。
そう例えたくなるような鮮烈な言葉を。

「私は今回の事件の黒幕はこの中にいると確信している。
一両日中にホテル・モスクワは、該当する組織に対し戦闘を開始する」













【11月3日 PM12:34】

[連絡会開始より8分経過]

Side アブレーゴ

「さて、そろそろ本題に入ろうか。
今この街ではホテル・モスクワに対して何者かが襲撃を行っている。
残念ながら襲撃犯の特定はまだだ。
実行犯どころか裏で糸を引いてる連中の、勿論いると仮定すればだが、見当もついていない。
今回連絡会を招集したのはその為だ。
また、一つ付け加えておくと被害はバラライカのところだけじゃない。
三合会(うち)の人間も殺られた。分かったのは一昨日だ」

「張、実は俺んとこにも被害が出てんだよ。こりゃあ、やっぱり……」

張とヴェロッキオが会話を交わしているが、俺はそれに相槌を打つ事も出来ずにいた。
ただただ右隣に立つ女の事が気になって仕方なかった。
会議の冒頭から、薄い笑みを浮かべたまま沈黙を保つ火傷顔(フライ・フェイス)の事が。

最初は連絡会なんて代物は馬鹿馬鹿しい考えにしか思えなかった。
確かにこのロアナプラって街は単一の組織が支配するのはまず無理だ。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ