八話
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横たわる一つの影。影は身じろぎはするものの、喋ろうとする気配はない。
「ああ、猿轡されてるんでしたね〜。すっかり忘れてました〜。え〜っと、このお札さんを張って」
えい、と言う可愛らしい言葉を発しながら少女は影に一枚のお札を張った。捕えた西洋魔術師用の札で、精霊への語りかけ……詰まるところの”呪文詠唱”を封じるための札だ。また、この札はその中でも特別性で、体外への魔力放出……身体強化等も封じる事が出来る。
「じゃあ、猿轡外しますえ〜」
後ろの結びを解き、一気に口に噛ませた布を取り去る。これで問題なく言葉を発せる様になったはずだが、影は一向に喋ろうとはしなかった。
「む〜、まぁええですけど〜。ほら、あ〜ん」
影は手足を縛られているため、食事は此方が食べさせるしかない。普段は式である猿がしているのだが、今回は暇過ぎた少女が買ってでたのだ。
「…………」
影は無言で口を開け、スプーンで差し出された食事を口に含む。普通なら警戒しそうなものの、影は淀みなく食事を進めていく。これは直ぐに分かったことだが、影は食事に薬が含まれているかどうか分かるらしい。無味無臭のものでも、だ。そのため、薬を使って情報を聞き出すことは早々に諦めたのだ。
「それにしても不思議な人ですな〜。薬には簡単に気付くし、術で頭覗こうにもできひんて千草はんがいうてたし〜」
「…………」
影は喋らない。術で頭が覗けなかった、と言うのは影にも驚愕だったが、小さな情報でも渡さないためには黙るしかないのだ。幸い、拷問の様なことはされていない。それが影にとっては救いだった。
「センパイよりは劣りますけど、貴方と打ち合うのも楽しかったですし〜。ここで捕まえとくには勿体無いんですけど〜。依頼主には逆らえないですし、またの機会があったらよろしくお長いします〜」
「…………」
影は喋らない。ただ、その鋭き双眸で睨みつけるのみ。
「その眼、ええですな〜。ウチ惚れてしまいそうやわ〜。でも、今はセンパイの方が優先です〜。ご飯も終わりましたし、それでわ〜」
「…………」
影は部屋を出る少女を見送る。その目は、敵に捕えられていると言う状況にも関わらず、決して諦めてはいなかった。
――修学旅行三日目、状況は大きく動こうとしていた。
「何!? 西の本山が!? それに西の長もやられたじゃと!」
夜もふけ、月がきれいに輝く時間。麻帆良学園の学園長室では近衛学園長の声が響き渡っていた。その声からは焦りが感じられる。
「助っ人……しかしタカミチは海外じゃし……」
それに、一線を退いているとはいえ西の長は歴戦の兵。それを打倒した相手となると生半可な実力のものでは足手まといにしかならない。どうしたものか
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