七話
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う、木衛木乃香は……
――修学旅行二日目
「…………」
「お、おい……あいつ何かあったのか?」
「し、知らん! 朝起きた時にはああだったんだ!」
周りが何やらうるさいが、俺はそんなことには構っていられない。今朝、朝起きて最初に思ったのが何故こんな場所で寝ているんだ? と言うものだった。……俺は何故か部屋に備え付けられている椅子に体を放り出す様にして寝ていたのだ。昨夜の記憶を辿ってみると、風呂から出た後の記憶が酷く不鮮明であることが分かった。何か大事なことがあった……そんな気がするのだが、それがどうにも思い出せないのだ。
「な、なぁ」
「……何だ?」
無意識の内に、酷くドスの利いた声を出してしまっていた。そこで漸く辺りを見回して見たのだが、クラスメイト達が一歩引いてこっちの様子をうかがっていた。そこまあで近寄りがたい空気を醸し出していたであろうことに、少し反省した。
「すまない。それで、用件は何だ?」
「(良かった、元に戻った)ああ、今日の奈良での判別行動のことなんだが……」
「ああ、それのことか。てっきり私はまた柿崎達にひっつくと思ってたが……違うのか?」
他の班員達もコイツが柿崎に会うというのを口実に女子と一日行動出来るのだから反対はしないと思うんだが、どうやら今回は違うのか?
「美砂と行動するのは当たり前だろ? 聞きたいのは美砂とどこに行くのかってことだよ」
「当たり前なのか……」
一応団体行動なんだが、自覚はあるのだろうか? 柿崎側の班員もそれでいいのだろうか? まぁ、麻帆良は人のいいのが多いから友達の頼みなら! とか軽いノリで了承していそうだが。
「どこでも好きな場所にしてくれ。俺は邪魔しないようにしてるさ」
「どこでもいいっていうのが一番難しんだけどな。まぁいいか」
離れていく奴に続いて一足早く席を立つ。これ以上周りに迷惑をかけないように部屋で気を落ち着けよう。そう思って、俺は一人部屋へと戻った。
――奈良公園
「うお! 鹿が、鹿が寄ってくる!」
「寄ってくると言うより、突撃されてる?」
とりあえずは有名どころを回るという無難な案に落ち着いたらしい。今は鹿と戯れながら奈良公園をあるいている。ああ、だから鹿煎餅など食うなと言ったのに。口直しの飲み物を渡してやりながらも、心は浮いていた。部屋で周囲に迷惑がかからない程度には気を落ち着けたが、観世には程遠い。一体、昨夜何があったというのだろうか。
「あ……」
ふと、目のやった先にいたのは一人の少女。長い髪を鈴付きリボンで縛った少女、神楽坂明日菜。彼女は俺の……俺の……
「なん、だ?」
彼女は一体誰だ? 俺は何故彼女の名前を知っている?
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