四話
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一際激しく痛みを訴えてくる指を無視し、限界を超えた五の矢を一息で放つ。同時に指から少々激しい出血が起こったが、そんなものは気にしていられない。チャチャゼロは矢が一つ増えた程度なら耐えるだろう。
「――投影、開始」
俺はこの戦いを終わらせる最後の一矢を、この手に投影した。
「――投影、開始」
弓に番えた状態で顕現したのは柄が極端にに短い細身の長剣だ。元の形は代行者の武装たる黒鍵。エミヤの固有結界に登録されていた、剣を矢へと改造したものの中の一つだった。
「剣? 何ダソリャ」
五つの矢を見事にやり過ごしたチャチャゼロが漏らす。弓で剣を放つ、普通に考えれば馬鹿げていると言うほかない。だが、この男は自分に恐怖を抱かせるほどの弓の使い手。それがこの土壇場で出来ないことをするはずがない、と。チャチャゼロは警戒と興奮を最大限にまで高めた。
「い、っけえぇええ!!」
剣を放つ。これで最後だと言わんばかりに烈火の気合を込めて放った。視界に映るは迎撃に走るチャチャゼロの姿。先の矢よりも速いというのに、よくも反応できるものだ。だが、その選択は間違いだったな。
「ウ、ラアァア!!」
飛来する剣と振われるナイフが真っ向から衝突する。二つの獲物は互いを喰らい、飲み込み、破壊せんとぶつかり合う。
「グ、ウオォ……」
正直言って、驚愕ものだった。いくら万全のエヴァンジェリンから魔力を供給されているとはいえ、ここまで拮抗するとは……だが、それもここまで。力が拮抗しているのなら、何が勝負を決するのか……答えは簡単。
――ピシピシ
ぶつかり合う獲物の”強度”にほかならない。チャチャゼロの扱う業物のナイフと俺の放った”強化”済みの改造黒鍵なら、こちらが上をいく。
「負ケル、カヨ!!」
そんなチャチャゼロの叫びも届かず、ナイフは粉々に砕け散った。
(良し、これでまだ勝機がある)
チャチャゼロの武器は奪った。本来なら腕の一本でも一緒に吹き飛ばしてやろうとも思ったのだが、そこまでは上手くいかなかったようだ。ナイフが砕ける寸前しっかりと射線から身をどかしていた。だが、基本武器使いであるチャチャゼロの戦闘力は落ちたはずだ。身体強化もまだ持つ。
「勝負はこれ、か……ら……」
突然、地面が目の前にやってきた。俺は理解が追いつかぬまま、意識を手放した。
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