二話
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なスキルはない。
「ねぇ、健二」
結局何も出来ずに歩いているしかなかった所に、明日菜から声がかかる。
「何だ?」
「初恋は実らないって言うけど……健二はどう思う?」
……とりあえず話に乗ろうと思ったら、そんな話題ですか? 正直、そんな事言われても大した答えなんて用意できない。だが、明日菜の声色は真剣だ。なら、こちらも精一杯答えるべきだろう。
「初恋、か……私見だが、実らないというよりは気付くんじゃないか?」
「……気付く?」
「そうだ。実際はどうなのか知らんが、初恋なんてものは早ければ幼稚園の頃でも芽生えるものだ。だが、成長するにつれて人との繋がりも増え、思考も豊かになっていく。幼い頃の思いを否定するわけではないが、自然と、自分はこの人が本当に好きなわけではないと気付いていくのだろう」
俺の答えに、黙ってしまう明日菜。恐らく、今彼女の頭のなかはタカミチのことで締められているのだろう。神楽坂 明日菜はタカミチが好き……分かっていたことだが、改めてそう認識すると、胸が何故か痛んだ。
「そう、かもね。でも、私はまだ終わってない」
無意識だったのか、それと俺に向けての言葉なのか……
「頑張ろう」
そう言って、明日菜は見惚れる笑みを浮かべた。
「俺は次で降りる」
「そっか」
電車の中、もう後何分もしない内に別れると言うのに会話はない。向かい合って座り、相手の顔をぼんやりと見つめる。
そんなことをしている内に、下車する駅に到着した。
「それではな。今日は楽しかったぞ」
「私もよ。あ、そうだ!」
明日菜がメモ用紙を取り出し、手渡してきた。
「それ、私の携帯の番号。また暇があったら遊びましょう。今度はルームメイトも紹介するわ」
「ああ、暇ができたら連絡しよう。必ず、な」
電車のドアが閉まる。ゆっくりと、明日菜を乗せた電車が離れていく。俺は、電車が見えなくなるまで、その場で見送った。
家に帰宅後、俺の携帯のアドレス帳にはしっかりと、“神楽坂 明日菜”の名が加えられていた。
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