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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#47 "Uncle SAm"
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なに?
あの男とシスターは知り合い?
いや、育てられていた?
シスターに?
シスター・ヨランダに?
半世紀以上に渡って、世界の裏側を独力で生き抜いてきた女傑シスター・ヨランダに?
そんな妖怪染みた彼女に子供の頃から育てられていただと?
しかも、しかも……こ、この街で…このロアナプラで生まれて育った……

「ただのガキだよ。アタシにとっちゃあね」

シスターはアッサリとそう答えた。
そしてこれで話は終わりだと言う事だろうか。
カップを持ち上げ、興奮し立ち尽くしたままの私など、まるで存在しないかのようにまたその香りを楽しみ始めた………

























"私"が"私"のまま礼拝堂に来たのはさて何度目だったか。
人類全ての罪を背負い磔となった男を(かたど)った木彫りのそれを静かに見上げる。

神にすがる資格なんて、とっくに無くしてしまっていたのだと思っていたのだけれど。
シスターの話によればそうでもないようだ。
人は己のやりたい事をやりたいようにやればいい。
神がどう思うかなど人たる身には分かる訳がない、か。

口の中が苦味をもった唾液で満たされる。
情報を生業(なりわい)とする工作員として、私は知る事こそが私の成すべき事だと思ってきた。
ありとあらゆる情報を知る事、掴む事。
そこから全てが始まるのだと。

「さて、」

礼拝堂の説教檀に置かれたままのフォックススタイルのサングラスを手に取り、ゆっくりと顔にかける。

「街に繰り出すとしようかね」

"あたし"は振り返り堂の出口へ向かう。

とっくに修道服は脱ぎ捨て、いつもの服に着替えている。

知らない事があれば調べるだけ。
あたしがやることはそれだけさ。
なあに、何も心配するこたあない。
何たってあたしのバックは強力なんだ。
遠い海の向こうと高い空の上。
双方に向かって投げキッスを一つかましてから、あたしは礼拝堂の扉を開け放った………












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