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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#47 "Uncle SAm"
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ア
ロシアンマフィア
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我が国にとっての将来の仮想敵
かつて世界の東半分を支配した過去の大敵
恐らく永遠に敵であり朋友でもある故郷
防波堤として育てたはずが、いつしか大きな津波となってしまった隣人
誰かがそう狙ったわけでもあるまいに、見事なまでのフォーカードだ。
あと一枚ジョーカーが加わればファイブカードじゃないか。
別にこの街の連中が徒党を組んで、我が国に対抗しようとしているわけではない事など百も承知なのだが。
それでもあまりいい気分ではない。
街がこんな状況下にあり、かつシスターがやたらと神の話なんて持ち出したせいか、どうも運命というやつに皮肉の一つでもぶつけてやりたい気分になってるようだ。
ん?
ジョーカー?
ああ、ジョーカーと言えば………
「そう言えばシスターはラグーン商会の、ゼロについて何かご存じではないですか?
あの男がどう動いているかとか」
テーブルにカップを置き、対面で未だ沈黙したままのシスターに訊ねてみた。
これはいい機会かもしれない。
あの不気味な男に関する情報を少しでも掴みとるための。
「おやおや、あの子も色々なとこから注目されてるね」
「あの子、ですか」
私の質問にシスターは片手を頬に当てながらゆっくりと口を開いた。
あの男をあの子呼ばわりとは少し驚いたが、そこは流石の貫禄というべきだろう。
益々期待を持てそうな予感に私は心持ち体を前のめりにさせ、シスターの言葉に意識を集中させた。
「あの子はね、この街で産まれたんだよ。
それから何年かアタシが、と言うかアタシとアタシが面倒みてた娘たちで育ててやったんだよ。
ふふ、古い話さ」
「シスターが!」
今度は心持ちどころではなく、はっきりと椅子から腰を浮かしてしまった。
目を見開き、みっともなくも口を開けたままの私に注意を促す事もせず、シスターは話を続けた。
その様子は他人に自分の孫自慢をする祖母以外の何者にも見えなかった。
「今じゃあ"ゼロ"なんて名乗ってんだろ?
全く格好つけてるもんだね。
昔はしょっちゅうピーピー泣いては、あの娘に抱き付いていってたもんだったよ。
アタシは叱り飛ばす役だったから、あまりなついちゃこなかったね。
今でも
教会
(
うち
)
にゃあ、あまり寄り付かないだろ?
アタシに怒られるんじゃないかとビビってんのさ。
全く図体ばかりデカクなっても……」
「か、彼は何者なんですか?」
シスター・ヨランダの言葉を遮るように言葉をぶつけた。
両手をテーブルの上へ叩きつけてしまったので、カップが僅かに揺れ音を立てる。
が、そんな事に構ってはいられない。
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