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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#47 "Uncle SAm"
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本国にいた頃はもっぱらコーヒー党だったが、シスターに感化されたか最近は紅茶も中々いいものだと思えるようになってきた。
ただシスター・エダとして過ごす時間が長い分、あまり紅茶を飲む機会もない。
暴力教会の糞シスターは優雅に午後のティータイムを楽しむ趣味がある、なんて噂でもばら蒔かれた日には街を気軽に歩けやしない。
二挺拳銃
(
トゥーハンド
)
あたりに聞かれたら何を言われることやら。
「ふふ」
対面から聞こえてきた笑い声に視線をカップの表面から持ち上げる。
今日のシスター・ヨランダは何かとご機嫌なようだ。
珍しく神の話など持ち出すし、さて何かあったのだろうか。
「何か?シスター」
私の訝しげな視線を
皺
(
しわ
)
の刻み込まれた分厚い皮膚で受け止めながら、教会の管理者たる老尼僧はカップをテーブルに置いて語り出す。
長い年月を生きてきたことを感じさせるしゃがれた、だが不思議と聞き取り易いその声で。
「なに、あの連絡会という代物さ。
まがりなりにも成立はさせているだろ?
立場も生まれも考えも人種も違う連中だらけのあんなもんをだよ。
張のやつもなかなかやるもんだ。
マフィアなんてどいつも似たようなもんだけど、それでもこの街の連中はやたら意気のいいのが揃ってるからね。
あの伊達男が何を考えてんのかは知らないけど、何かを守り続けるってのはしんどいもんさね。
壊すことに比べりゃ遥かにね。
そう、壊れるのは一瞬なんだよ。
長い年月を重ねたものでも、どんなに多くの人間が関わったものでも。
どれだけ人の思いが積み重ねられたものでも、一瞬でね」
「………」
そう言ってシスターは唯一残された片目を閉じた。
その長い半生に刻まれた記憶を思い返そうとするかのように。
私とシスター・ヨランダが出会ったのは当然ながらここロアナプラだった。
だが任地に赴く前に、私は直属の上司であるところの情報本部第二課長リチャード・レヴンクロフトから現地に於ける協力者たる女性についてレクチャーを受けていた。
その内容は些か信じ難いものではあったが、その中身に一切の誇張が無かった事を今では嫌というほど思いしらされた。
何しろシスターがスパイ稼業などという世界の裏側に首を突っ込んだのは、まだ前の世界大戦の時分。
当時は
鉤十字
(
ハーケンクロイツ
)
の旗の下、女を武器に諜報戦を潜り抜けた毒婦だったとか。
その後も国際社会の裏側を生き抜き、今ではここロアナプラで教会のシスターなんてやっているわけだ。
こうして我々のような組織と繋がりを持ちながら。
しかし先程のシスターの言葉で思い至ったのだが、あの連絡会という代物はなかなかに皮肉の聞いた連中で構成されている。
中国系マフィ
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