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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#47 "Uncle SAm"
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に相応しい清謐さと落ち着きに満ちている。
そして目の前には長年主に仕え続けてきた老尼僧が、慈愛の笑みをたたえながら悠然と紅茶を飲んでいる。
そして私が身に纏うは神の愛に祝福された尼僧服。
なかなかに趣ある光景と呼べるのではないだろうか。
もっとも、老尼僧の右目が黒い眼帯で覆われており、既にその肉体の一部を主の身許へ送ってしまっている事。
そして供されている話題が些か修道女二人が話すには似つかわしくない、といったあたりに目を瞑ればだろうが。

「さて、それで今日の連絡会の様子が知りたいって事だったね。
議事録か音声が入り用かい?」

「はい。ぜひ入手を」

さて、今日の連絡会で何が話し合われ、何が決定されたのか。
それによっては"私"か"あたし"のどちらになるかは分からないが、忙しくなるかもしれない。
サングラスを外し、久し振りに裸眼で見るシスター・ヨランダの顔を見ながら、"私"は心密かに溜め息をついていた。
全くロアナプラ(この街)は賑やか過ぎる。
よくもまあ、こんな街が成立しているものだ。

連絡会。

この街で起こる様々な問題を解決する、それこそ成り立たせ続ける、為に不定期に開催されている、謂わばロアナプラ版首脳会談(サミット)

主な出席者はこの街でも特に有力な四つの組織(三合会、ホテル・モスクワ、コーザ・ノストラ、メデジン・カルテル)の幹部。
稀にその傘下にある組織の幹部を招いた拡大集会もあるそうだが、今日はどちらになるやら。

タイ奥地に広がる麻薬の一大産地。 黄金地帯(ゴールデントライアングル)
そこから産出される麻薬の流出港として栄えるここロアナプラ。
その街を安定させるための共同統治案として生み出されたマフィアどもの協議会。
共存共栄というお題目を掲げ(文字どおりお題目だ。実際すぐこの前も連絡会に参加しているメデジン・カルテルとホテル・モスクワが殺り合った)、外部からの敵を徹底的に排除する事でこの街の異常性を保っている。

今日の議題は疑いもなく、いま街を騒がせてる襲撃犯の事だろう。
主な標的はホテル・モスクワのようだが、その本当の目的は未だ分かっていない。
組織の壊滅か、或いはバラライカ個人への遺恨か。
この街の利権を狙ってか、自分の所属する組織での地位向上を狙ったか。

いずれにせよ、バラライカというのがまずい。
よりにもよってあの戦争凶を怒らせるとは……
私の立場、というよりも私の所属する組織としてはこれは見過ごせない事態だ。
率直に言って、現在の我が職場を取り巻く環境は非常に芳しくない。
ソ連邦の崩壊以後、明確な敵を見失った我々には一時廃止論さえ挙がったものだ。
組織の存続こそ叶えられたが予算は年々削減される
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