暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#46 "an entreaty to stop entering the war"
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

複数の組織が互いに角突き合わせて、たまにゃあ、今度みてえな騒動が起こる。
にも関わらず警察や軍は動きもしねえ。
こんな"異常"な街が他にあるか?
こんな"不自然"な街が"自然"に出来上がると思うか?」

ここで、一旦言葉を切る。
向こうからは特に返事はねえ。
だがそれに構わず、壁から背を離して窓の方へと俺は歩き出した。
さっきまで冷たく感じていた汗は少し熱を帯び始め、ファンの音は少し遠く感じるようになっていた。

「世の中にはな、不自然なものが自然に生まれて来るってこたあ、ねえんだよ。

"誰かがそれを望んで、誰かがそれを生み出そうとしない限り、絶対に存在しない"

それはな、そういうものなんだよ。
関係ねえ話だと思うか?
俺が何を言いてえのか分からねえか?

じゃあ、簡潔に言うぜ。
ゼロ。
お前が何をするつもりか知らねえが、今度の件からは手を引け。
必要以上に関わろうとするんじゃねえ」

事務所の中を横切り、窓の前に立つ。
窓から見える景色はいつもと変わらねえ我が麗しのクソッタレな街のままだ。

「この街を現状(いま)のままで在って欲しいと願ってる連中……
バラライカ、張の旦那、他の組織の奴等、いや、それだけじゃねえ。
もしかしたら今まで顔も見せなかった連中まで動き出すかもしれん。
この街が異常で、不自然なままでいてくれた方が都合のいい連中がな。
勘違いすんなよ。
俺はこの街を気に入ってる。
とびっきりにクソッタレで、最高にイカれてるこの街がな。
今度の事件を起こしてる野郎はこの街を壊そうとしてやがる。
本人にその気はねえのかもしれねえが、このまま行きゃあこの街は今のままでいられねえ。
街の勢力バランスが崩れて支配者が入れ替わる、そんな程度じゃ済まなくなる。
ああ、済まねえだろうさ。
そりゃあ、良くわかる。
どんな結末が訪れるにせよ、このまま放っておいて良いわきゃねえ。
この街に住んでる、この街でしかやっていけねえ連中は皆そう思ってる。
皆そう願っているさ」

電話の向こうからは全く言葉は返ってきやしない。
無口な野郎だとは知ってるが、相槌も打てねえたあ困ったやつだ。
ふっと鼻から息を吐き出し、俺はゆっくりと言葉を紡いでいった。

「ゼロ。
そんな連中がお前を利用しようとしてる。
お前は自分で思ってる以上に重てえ存在なんだよ、ロアナプラ(この街)じゃあな。
けどな、俺はそれを黙ってやり過ごすわけにゃあいかねえ。
俺は心の狭い経営者だからな。
テメエの部下を勝手にいいように使われんのは気に入らねえんだよ。

ゼロ。

どうせ言ったって聞きゃあしねえんだろうから、オメエに命令な
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ