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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#46 "an entreaty to stop entering the war"
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き残るためなら何だってしてくるやつだと、俺はそう考える。
利用出来るもんがありゃあ、徹底的に利用し尽くす。
道端に転がってる石だろうが、敵がひり出した糞だろうが、味方の死体だろうが構わねえ。
それで生き残る事が出来るなら躊躇いはしねえさ。

ゼロ、あれはな。

アイツは確かにお前の言う通り、最後の最後までテメエの誇りを貫き通すだろうよ。
だが、アイツの誇りってやつをお前は本当に理解してんのか?
第一偉そうに言ってる俺だってアイツを理解してるたあ、胸張って言えねえよ。
アイツが何をどう考えて、何を選んで、何を捨てて、何を最期まで持ったままでいるのかは俺らにゃあわかんねえ。

そうは思わねえか?

確かにオメエの言う通りかもしれん。
自分達の戦場で他人が好き勝手に振る舞うなんざ認めやしねえだろさ。
ただ今回は戦場どころか、相手の姿すら未だ見えちゃいねえんだ。
あれの苛立ちは相当なもんだと思うぜ。
ここまで虚仮(こけ)にされた事なんざねえだろうしよ。
少なくともこの街に辿り着いてからは……」

そこまで話していて、ふと俺の脳裏を掠めるものがあった。
それが何なのか、ハッキリとは掴めねえまま、俺は電話の向こうにいる"やつ"に向けて、ちょっとした質問をしてみた。
決して短くも浅くもねえ付き合いをしてきた、いつからか"ゼロ"と名乗りだした"やつ"に。

「ところで一つ聞いておきてえ事があるんだが……構わねえか?」

電話の向こうからはアッサリとした肯定の返事。
急な話題の転換だってのに、全く訝しげな様子も感じさせねえのはコイツらしいか。
空いた片手でサングラスを押し上げながら、俺が発したのは短い質問だ。
我ながら何とも抽象的でとらえどころのない質問に、コイツはどう答えるんだろうな……

「お前、この街をどう思う?」

向こうから返ってきたのは沈黙のみ。
だが、俺は返事を待たず語り続けた。
ファンは変わらず回り続けている。

「この街は異常だ。
不自然と言ってもいいかもしれん。
俺らみてえな悪党が当たり前に大手を振って街を練り歩く。
その傍らじゃあ、カタギの人間が呑気に露天なんぞ広げてる。
他の街じゃ、こんなこたあ先ずねえよ。
混ざり合わねえものはな、決して混ざり合わねえんだよ。

綺麗なもんは綺麗なもん同士で。 汚ねえもんは汚ねえもん同士で。

キチッと棲み分けていくもんなんだよ、それが自然ってものさ。
例えどれだけ表面が混ざっているように見えてもな。
ちょいとかき混ぜてやりゃあ、あっという間に別れていっちまう。

この街だけだぜ。

戦争してるってわけでもねえ。
一つの組織が牛耳ってるわけでもねえ
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