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久遠の神話
第一話 水の少年その六
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「あいつの方が圧倒的に強かったし。そもそも心の鍛錬はできていなかったから」
「つまり段で強さって決まらないんですね」
「そうなんですね」
「あいつは八段以上の実力があるね」
 中田を見て話すのだった。
「今はね」
「八段以上って」
「洒落にならない強さですよね」
「そこまでの実力って」
「うん。とにかく強いから」
 また上城達に話すのだった。
「あいつとは稽古をしてもね」
「いいんですね」
「そうしても」
「するといいよ。高等部の先生はできた人だし」
 少なくともだ。その中学の教師とは全く違うというのだ。
「こっちからも話をしようか?」
「あっ、じゃあ御願いします」
「そうしてくれるんなら」
 彼等にしてもだ。その話は願ってもないことだった。強い相手と稽古ができるということはだ。それだけ得られるものが多いからだ。
 それでだ。上城も言うのだった。
「じゃあ中田さんとも」
「ああ、じゃあ稽古してくれよ」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 他の面々も頷きだ。こうしてだった。
 上城達は中田の稽古を見てだ。その帰りにだ。
 上城の前にだ。肥満したパーマの男が出て来た。
 鋭いというよりか剣呑な目をしており荒んだ表情をしている。肌は黒く顔も膨れている。みすぼらしい服に右手には竹刀を持っている。
 その彼がだ。上城に対して言うのである。
「おい、そこの御前」
「僕ですか?」
「そうだよ。御前だよ」
 まるで因縁をつかるかの様な口調である。
「御前何でここにいるんだ」
「何でって通学路だからですけれど」
「通学路だからいるのか」
「はい、そうです」
 その通りだと答える彼だった。
「それが何か」
「御前、剣道やってるな」
 彼が背負っている竹刀袋を見ての言葉だった。
「そうだな」
「ええ、まあ」
「何段だ」
「二段です」
「俺は四段だ」 
 男は自分から言ってきた。己の段をだ。
「俺は強いんだ」
「四段でしたらやっぱり」
「何でその俺が負けたんだ」
 見れば表情がおかしい。どうやら酔っているらしい。
 言葉にもろれつが回っていない。その彼が言うのである。
「あんな若僧に」
「あの、どうされたんですか?」
「俺は偉いんだぞ」
 男は今度はこんなことを言ってきた。
「先生様だ。先生様なんだぞ」
「学校の先生なんですね」
「ああ、そうだ」
 その通りだとだ。ふらつく足で名乗るのである。
「そうなんだよ」
「そうですか。先生なんですか」
「糞っ、何で俺をクビにしたんだ」
 問われてもいないのにだ。こんなことも言う男だった。
「教育委員会の連中はよ」
「クビって」
「生徒を殴って何が悪い」
 どうやら暴力肯定主義者の様だ。その喋り方か
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