暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#45 "dizziness"
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
【11月3日 ???】

Side ロック

「………」

さっきまで夢を見ていたような気がするけど良く思い出せない。
夢なんてそんなものかもしれないけれど。

目を開けてみれば見えるのはやたら高い天井。
この街はどこも天井が高いのだろうか、見上げる夜空が遠く感じられるように。
目覚めて先ず、俺考えたのはそんなこと。
どんな時も俺はなにかを見上げてる。

自分は一体どうなってしまったんだろうとか、此処はどこなんだろうとか。
そういう事は考えなかった。
もしかしたら頭の何処か隅の方には在ったのかもしれないけれど、俺がはっきり意識していなければ考えているとは言わないだろう、多分。

脳味噌ってやつは、俺本人も知らないところで膨大な量の情報を処理しているそうだ。
人が何時間も眠るのはその為だとか、何だとか。
だからきっと俺の頭ん中じゃあそこに"在る"のだけれども、意識されないが故に"無い"ことにされてる情報が山のようにあるのだろう。

そう。

誰も意識しなければ。

誰も気付かなければ。

そこに"在ってもそれは"無い"

そういうことになってしまうんだよな。

だったら。
誰も俺に声を掛けなければ。
誰も俺の話に耳を傾けなければ。
誰も俺を見てくれなければ……

俺は生きていると言えるのか?

我思う故に我在り?
自分がこの世界に在ると思えば、その思ってる自分は確かにこの世界に在るというのか?

本当に?

今ここでこうして見知らぬ部屋の天井を眺めている俺が、この世界に存在していると誰が証明してくれるというのだろう。
岡島録郎でもない、ロックにもなれないでいるこんな俺を。

日本に居る糞上司は端金の為に"俺"を売った。
親父やお袋にはもう二度と会う事もないだろう。
彼らの息子は死んだんだ。
少なくとも彼らの世界に俺は存在しない。
例えこの"俺"が確かにこの世界に在るのだとしても、だ。

岡島録郎は死んだ。
岡島録郎の世界は終わった。
岡島録郎は"在る"ことを止めた。

「俺は、岡島録郎、じゃあ、ない」

天井に向かい切れ切れに呟く。
この言葉だって誰かが聞いてるわけじゃない。
それでも別に構わない。
どうせこの街じゃあ俺の言葉を受け止めてくれる人なんて録に居やしないのだから。
どうせ、俺は本当にここに在るのかどうかも解りはしないのだから。
俺の言葉を聞いているのが俺だけだというならそれも構いはしない。
だって俺は一度死んでいる。
でもその後生まれる事に失敗した身なんだ。

この街にだってそんな奴は居やしないんじゃないだろうか。
死に損ないの身体で地べたを這いずる奴。
もう
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ