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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十九話 権利と義務
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のことを知っているからな。何度か俺にも忠告に来た。

ただ、今日の話は辺境星域の開発についてではないだろう。もっと別な事だと俺は睨んでいる。リヒテンラーデ侯から先日、話が有った。あの爺がきちんと二人に説明すれば良いものを……。まあ気持ちは分からないでもない。リヒテンラーデ侯が何を言っても連中は素直には取れないだろう。それに爺様なりに考える所は有るようだ……。

でもな、俺は軍のナンバー・スリーなんだ。民生省と自治省のトップが雁首揃えて会いに来るって拙いだろう……。一度あの爺さんにきちんと言わなければならんな。このままだと軍の、いや宇宙艦隊の影響力が強くなりすぎるってな。全く、なんで俺がこんな心配しなくちゃならんのか……。



帝国暦 489年 3月 28日  オーディン   宇宙艦隊司令部  オイゲン・リヒター



目の前のヴァレンシュタイン司令長官がA4サイズの資料を読んでいる。それほど分厚いものではない、二十枚程度の資料だ。読みながら時折小首を傾げるようなしぐさをする。小首を傾げている時は何かを考えているのだろう、そのページを読み終えるのが多少遅い。

司令長官が資料を読み終え会議卓の上に資料を置いた。そして小首を傾げ右手の中指で軽く会議卓を叩きだした。
「閣下は如何思われますか」
「さて……」

目の前の青年は穏やかな表情で小首を傾げている。反応は良くもないが悪くもない、そんなところか……。そしてそんな彼を私とブラッケが見ている。新領土占領統治研究室の中に有る小さな会議室は静けさに満ちていた。司令長官の指が立てるトントンという軽い音だけが小さな会議室に響く。

会議卓の上には資料が置かれている。表紙には何も書かれていない、というより何も書けない。資料の中身は今後の帝国の政治体制について記述されているのだ。現在の皇帝による君主制専制政治、これでは皇帝の資質によって帝国の政治は左右されかねない。それをいかにして防ぎ国家を安定させるかがこの資料の眼目だ。

「議会政治の導入ですか……」
「そうです、帝国臣民の意見を取り入れ同時に皇帝の暴政を防ぐ……。そのためには議会政治を導入するしかありません。それによって帝国臣民に暴君と戦うだけの制度と見識と力を与えなければ……」

司令長官の呟きにブラッケが熱い口調で話しかけている。何としても議会政治を導入しなければと思っているのだろう、私も同じ想いだ。今は良い、皇帝は明らかに開明的な政策をとり国政を変えようとしている。そしてヴァレンシュタイン司令長官もそれを望んでいる。

だがこの二人が居なくなったら……、例えば百年後はどうか? 今のままでは暴君による暴政を止めるだけの人材がいるかどうか、そして暴政を食い止める制度もない……。このままでは帝国は皇帝の暴政に翻弄さ
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