暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#41 "I shall have to accept darkness. because……"
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
【11月3日 AM 2:09】

Side セルゲイ・サハロフ

「う、うう…」

抉じ開けるようにして重い瞼を開く。

き、気を失っていたのか、俺は。

後頭部に痺れるような痛みが走る。

くっ 撃たれた際にどこかにぶつけ……

そうだ!

俺は撃たれたんだ!

突如脳裏に二つの銀色が煌めく。

撃たれる寸前に確かに目にした二つの銀色。

「あれは……」

だがそれを思い出すことは出来なかった。
急激に上昇する意識レベルと共に、撃たれた腹と左脚が思い出したかのように熱を帯びる。
まずいな、これは……

「ぐっ…くそ……」

床に手を着き身体を起こそうとするが、身を(よじ)る度に撃たれた腹は一層の熱を帯びる。
まるで力が入らず上体を起こす事が出来ない。
情けない、それでも大尉の部下か!

仕方なく首だけを何とか持ち上げ周囲を把握しようと努める。
とにかく出来ることをやらねば……
俺はパブロヴナ大尉の部下なんだ。
大尉とあの"共同墓地"で誓い合った同士達。皆のためにもこんなところでただ死ぬわけにはいかん。
何か、何か残さねば……

あそこで倒れてるのは確かテーブル席にいた客だな。
俯せのままピクリとも動こうとしてない、殺られたか。
此方はカウンターにいた客だろう。
……頭が潰されているが、服から判断すればそうだろう。
カウンターの奧はこんな体勢からじゃ確認のしようもない。
棚の酒瓶が派手に割られてるのは分かるが。
誰か一人でも逃げ延びて、大尉殿に伝えてくれていればいいんだが……

「くっ…伍長!メニショフ伍長!」

見える範囲には伍長の姿はない。
未だ戦っているのか?
それとも逃げ延びてくれたのか?

店内には動く者も音を立てる者もいない。
ただ俺の叫び声だけが空間を震わせる。
酒と血の匂いが混じり合う反吐が出そうな程、この街に似つかわしい空間の中を俺の声が 響き渡る。

「メニショフ伍長! メニ……」

「伍長さんならここだよ、兵隊さん」

諦めずに叫び続ける俺の耳に飛び込んできたのは子供の声。
やたら嬉しそうな、今が楽しくて堪らないとでも言うような子供の声だった。
声が聞こえてきたのは後頭部から、つまりこの声の主は俺の後ろに立っている。

床で仰向けに倒れたままでいながらも、発せられた声の位置から何とか相手の場所を探ろうとする。
同時に自分が撃たれる寸前に見た二つの銀色のイメージが再度意識に浮かぶ。

二つ、そう二人いるはずだ。
もう一人は……
ソイツもすぐ傍にいるのか?

その解答は呆気なくもたらされた。
俺の頭上で奴等はなにやら会話を始めた、ただし俺の聞き慣れない言語で。

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ