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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#37 "What are you thinking, when look up at the moon"
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そんなに涙もろい方ではないと思っていたんだけどな……
岡島録郎は確かによく泣く男ではなかった。
ロックならきっと泣きはしないのだろう。俺の思い描いたロックなら。
「ま、それでもいいか……」
泣きたい時は泣けばいい。
好きな事を好きなようにやればいい。
ロックになれないのならそれでもいい。今はそれでいい。
別の誰かを目指すのか、あくまでロックになる事を目指すのか。
未だ決めてない。考えてすらいない。
取り敢えず、
「『イエロー・フラッグ』でも行くか……」
酒でも飲みながら今夜を過ごすとしよう。
一人であの店に行くのは初めてだけど、それもいいだろう。
そう決めた俺はベッドから降り立ち、財布を尻ポケットに入れて部屋を出る。
この街に来て俺が一番変わったのは時間を気にしなくなった事だろうか。
何せ、電車やバスを利用するような機会は先ずない。
夜飲みに行っても終電の時間なんて気にする必要はないわけだ。
その分、とことん付き合わされることもあるわけだけれども。
さすがに仕事ではそうもいかないけれど、一旦事務所を出てしまえば本当に時間なんて気にしなくなった。
実際今も腕時計は填めていない。部屋に置きっぱなしだ。
だからあの子達に会ったのも何時くらいって正確なところは分からないんだよな。
何となく二時か三時くらいかなと思っていたんだけど……
しかしいくら何でもあんな子達が出歩くには遅すぎる時間帯だよなあ。
そんな事を考えながらビルを出て前の通りに踏み出したその瞬間、
「!」
後ろからなにか太い棒のようなものが胸に押し付けられる。
だが俺には呻き声を出すどころか、押し潰された肺から息を吐き出す事すら出来なかった。
その時、同時に俺の口には布らしきものが押し付けられていたせいだ。
「………!」
頭が混乱して暴れる事も出来なかった。
恐怖すら感じられなかった。
何だ何これ痛い苦しいなになになに何が一体俺何故だってここいやでも痛いくるし……
言葉がぐるぐる回り出す。
脳みそに急激に眠気が侵入してくるような不快な感じ。
全身に力が入らず立っていられなくなる。
何か薬物が……
俺の意識があったのはそこまで。
あとは暗い闇の底まで引き摺り下ろされる自分自身をどうする事も出来なかった………
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