第五話 幼児期D
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くれてなによりだが、やっぱり子どもだなーっとも思う。まぁ4歳なんだし、これが当たり前なんだけどね。
「ねぇお兄ちゃん、向こうに行ってみようよ!」
「こらこらアリシア。お兄ちゃんからそんな離れないの」
雪景色の中を走りだそうとした妹を慌てて止める。いくら見晴らしがよく、危険も少ないだろうとはいえ、それで絶対大丈夫なわけではないからだ。
俺のレアスキルである「転移」は、俺自身または俺が触れているものを任意でとぶことも、またはとばすこともできる。逆にいえば、俺から離れたものを転移させたり、任意なので俺が認識していないものを転移させることはできない。このレアスキルはすごく便利だが、万能というわけではないのだ。
昔、俺はこのレアスキルで色々実験したことがある。某かきくけこさんの能力だったり、あこがれのマホカンタとかできるんじゃね? とか思ったからだ。
でも結果はほぼ惨敗。もう1つある欠点も理由の1つだが、一番厄介だったのが「任意で発動する」ことだった。俺には常人以上の反射神経もなければ、向かって来る魔法に真正面から触れて転移させる勇気もなかった。というか怖いし、タイミングをしくじったら大怪我する博打をするぐらいなら避ける。転移で逃げる。転移使って堂々と全力で逃げる。
まぁ俺の転移はそんな感じなわけで、とにかく触れていなければ効果を発揮できない。そのためアリシアと距離が離れていると、咄嗟のとき助けられないのだ。なので、放浪している間は妹とできるだけ手をつないでおくように、俺は心がけている。
「むー」
「そんなハムスターみたいに頬を膨らませても、危ないものは危ないの」
でも妹はちょっと不満そうだ。確かに一面雪景色を思いっきり走り回ってみたいのはわかるな。
「……妹よ、名案が浮かんだ」
「めいあん?」
「名案は…、こう頭のここらへんに豆電球がついたような気がすること」
妹の頭の上に『? マーク』が見えた気がした。いきなり応用技を会得してくるとは、なかなかやるじゃないか。とりあえずそんな感じだと、上手にできたことを褒めておいた。妹の頭の上にさらに『?』が乱立していた。そんで俺褒めた。わぁ、これがループ。
「1人で走るのが危ないなら、お兄ちゃんと一緒に走れば問題ない」
「お兄ちゃんと走るの?」
「あぁ、そうだ。……アリシアよ」
俺はにやりと不敵に笑ってみせる。一度言ってみたかったあのセリフ。俺はアリシアより一歩前に足を踏み出し、そのまま語りかけた。
「――――ついて来れるか」
「お兄ちゃん、ながぐつが脱げてる」
「…………」
一歩進んだ時、かたっぽ雪に埋まって脱げてしまった長靴を、いそいそと無言で装備し直す俺。
……かっこよく決まったはず
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