暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#34 "conversation with myself"
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
【11月2日 PM 2:28】

Side ベニー

暑い、そして熱い。

額に浮かぶ汗を腕で拭ってから息を洩らす。
どうせ拭っても後から後から吹き出してくるわけだけど、だからといって拭わないって訳にもいかない。
後で腹が減るからって食事をしない訳にもいかないし、いずれ死ぬからという理由で生きる事を止める訳にもいかない。それと同じ事だ、多分。

………熱さのせいかな。下らない事を考えてる、我ながら。

汗と機械油に全身を浸していると、脳にもおかしな影響が出るのかな?
それとも未だ残ってるアルコールと妙な化学変化でも起こしたか……

11月でも暑いロアナプラ。
更に港に係留されてるクソ熱いラグーン号の機関室。
エアコン(文明の利器)の恩恵にも与れないこの場所で僕は人体の謎に取り組んでいた。 機器のメンテナンスをしながらだけど。

ハッキリ言ってこんな仕事は急いでやる必要があるわけじゃない。
最近襲撃を受けた訳でもないし、お久し振りの海賊仕事の予定が入っている訳でもない。 それどころか本業の荷運びまで全くの白紙状態だ。
得意先である三合会やホテル・モスクワはそれどころじゃないからね。
他のところも押して知るべし。
緊急の荷物運送は自分達の組織で回しているらしい。こういう時、弱少勢力は寂しいものだ。

じゃあ、何故こんな事をしてるのか?
頼まれた訳でもなし、命令された訳でもない。
自分の部屋か通信室でネットサーフィンでもやってればいいのに。
その方が安全だし第一"自分に似合ってる"

「………」

目は機器の数字をチェックしたまま。手は休める事もせず動かし続ける。
脳の半分で外界を認識しながら、もう半分で内側を把握していく。

どちらにせよ今日は何かをチェックせずにはいられないようだ。
自分との対話なんてティーンエイジャーの頃にもやらなかったんだけどなあ。

街が騒々しくなって久しい。

この街に来て二年ばかり経つけど、これだけ長続きするような事態は初めてだ。
大抵は一週間も続かない。
誰かしら、何かしらの"力"が働き、騒動は収まってゆく。
街は何も変わらず、僕も何も変わらない。それで良かったんだよなあ、今までは。

僕は銃を撃てる人間じゃない。
だから街がどれだけ賑やかになっても、冷めた目で見ることが出来た。
"人を撃つ事が出来る人間達を"
そうしなければ生きていけないから。

余計な事には首を突っ込まず、"そういう人間"を批難する事もせず、ただ在るが儘を受け入れる。
今でも理解出来ないし、この先も出来るとも思わない。

"人を殺せる人間の気持ちは"

「………」

思い浮かぶのはゼロとレヴィの顔。

この街に来て
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ