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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
chapter 03 : variety
#30 "please tell me what your name is"
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は一定の秩序が保たれているものなのです。そこに利権が絡む場合は特に。

善良な人々が想像するような、毎日あちらこちらで殺人が起こるような街はそうザラにありません。
殺人というのはそれなりに手間も掛かれば後始末も必要なものなのです。
マフィアだって馬鹿じゃありません。
不必要な事なら、しない方が良いに決まってるではないですか。

戦争地帯やテロが頻繁に起こる地域。もしくはマフィアも興味を示さないようなスラム街。
そういった処を除けば、 殺人なぞそうそう起こるものではないのです。
少なくとも車で轢き殺される人よりはずっとその数は減るはずです。
それが裏社会の常識というものです。

その常識というものが一切通用しないのが、あのロアナプラという街なわけです。
何しろあの街では"掃除人"すら只者じゃありません。
『始末屋』とも呼ばれる彼女は街の古株であり、それなりの有名人です。
それなりとは申しましたが、あの街で有名人になれるだけでも大したものではあるのです。
況して彼女は大きな組織に属しているわけでもありません。
それで有名になれるというのには理由があります。

一般的(くどいようですが此方の世界での一般)に言って、掃除人というのは死体の後始末を請け負う人間を指します。
やり方は人それぞれなのでしょうが、基本的には死体が作られてからが彼らの仕事です。

ソーヤー(言い忘れていましたが彼女の名前です)を有名たらしめる理由の一端は、時に彼女が死体を作る仕事も請け負う事です。
これは非常に珍しい。
さすがはロアナプラというべきか……
生憎私は彼女の素顔も仕事振りも見た事はありません。
"始末中"の彼女は大きな白マスクにゴーグルを着けているため、顔は全く分からないためです。
女性というのも張大兄から聞いた話です。(大兄は彼女の素顔を知っているらしい)
街に騒ぎが起これば彼女もさぞ喜ぶ事でしょう。仕事という以上に死体を愛している彼女ですから……















Side ロットン

「暑いな…」

思わず呟き、サングラスのブリッジを指で押し上げる。

太陽神(アポロン)は常に厳しい視線を地上に注ぐ。その苛烈な業火で咎人を焼き尽くさんとしているのだろうか。拭い切れない過ちを犯した愚かな咎人を。

「………」

伏せていた顔を上げ、街の雑踏を歩く。
擦れ違う人達は何を思うのだろう。太陽神の裁きの下で。

この街の事は聞いていた。そしていつか必ず訪れる事になると思っていた。シェンホアには随分と反対されたが……

この街が魔界だというなら、そこは正に俺に相応しい場所なのではないだろうか?
生涯消せぬ罪を背負った俺のような
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