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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#28 "finally the wizard comes on the stage"
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カウンターに突っ伏して顔が見えないんだが、泣いてない事を祈るばかりだ。
「やかましね!
私の英語上手なくてお前に迷惑かけたか。
言われなくても連れてくね。ロットン! 早よ立つんですだよ!」
「やはり俺に立ち止まる事は赦されないらしい。
この身は既に運命に隷属している。哀しき運命にな。ならばそれに従うのみ。
……済まんな。笑ってくれても構わない。お前に借りを残して去り行く俺を」
スツールから降り、床に立ったロットンが僅かに振り返り俺に謝意を告げる。
借り……
俺は刹那カウンターに置かれたままの手を付けられていないグラスに視線を飛ばしてから、奴にこう告げた。
「面白い男と席を並べたお陰で、今夜は美味い酒が飲めた。俺にはそれで充分だ」
そう言って俺のグラスを掲げてみせた。
ロットンは僅かに口角を上げたようにも見えたが錯覚だったかもしれない。
彼は手を挙げる事もなく、店の出口に向かって歩いていった。
それを見送っていたシェンホアも、自分のやるべき事を思い出したか、後を追い出ていこうとする。
「………」
折角の機会だ。ちょっと鎌をかけてみるか。
『シェンホア。張大兄によろしく伝えてくれ。この街の友愛と平和を祈っていると』
『……ええ。確かに伝えておきますわ』
俺の広東語はどうにか通じたらしい。
彼女は寸時立ち止まった後、その切れ長な目を更に細めながら美しい発音の広東語で返してきた。
そのまま艶やかな黒髪を揺らしながら、店を去っていこうとする彼女を遮るものは誰もいなかった。
まあ、当然だろう。いくらうちの住人達でも、今夜の出来事はさすがに、な。
しかし今度の一件は俺の予想以上に派手になりそうだな。
ダッチとも話をした方が良いかもしれん。
いや、ヨランダのところへも行く必要が……
「おい…ゼロ……」
また俺が考えに耽っていると、隣からレヴィの低い声が聞こえてくる。
そちらに目を遣れば、彼女はカウンターの上に片肘をつき手の平で側頭部を支えながら俺を見ていた。
気のせいかもしれんが、随分と疲れているようだ。彼女にしては珍しい。
「で、結局今夜の事は何だったんだ?」
そのままの姿勢で尋ねられる。麗しの三白眼で睨まれながら。
ふむ、何だったのか、か……
「月並みな言い方だが、始まりの終わりってやつかもしれん。
荒れるぜ、この街は。俺の予想を遥かに越える形でな。
正直俺と"あの二人"の出会いこそ、終わりの始まりかと思っていたんだがな。
まだ始まってはいなかったわけだ。
下手すりゃまだ役者が出揃っていない可能性すらある。
喜べ、レヴィ。デカいパーティーになるぞ、間違いなく」
俺はロットンが残したままのグラスに軽く自分のグラ
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