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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#28 "finally the wizard comes on the stage"
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やがる。
さすがに何か言ってやろうか。そう思い、カウンターを叩きながら怒鳴りかける。
「おい!で、テメエはどこの……」
「ああ、やっと見つけたね。全く!
うろちょろするなと言ったはずね。勝手な行動は謹んで欲しいんですだよ」
アタシの言葉を遮るように、矢鱈訛りの強い下手くそな英語が入り口から飛び込んでくる。
そっちに目え向けりゃあ、長い黒髪のチャイナドレスなんぞ着込んだ女が真っ直ぐカウンターに向かって来る。
どうも優男の連れらしい。
「……帰りたい、家に」
ベニーがポツリと洩らすが、構っちゃいられねえ。
こんな騒動の中心にいて尻尾巻いて逃げ出したとあっちゃあ、
二挺拳銃
(
トゥーハンド
)
の名が泣くぜ。
横で呑気に飲み続けてる相棒を視界の端に入れながら、あたしは近付いてくる"ですだよ"女を睨み続けていた………
【11月2日 AM 1:40】
Side ゼロ
「全くこんなところにいたか!探すこっちの身にも…ってお前、何飲んでるね!
ビールも飲めない下戸だろうが!」
「安心しろ。飲んではいない。香りを楽しんでいるだけだ。未知なるものへの探求は男の性だ」
「く、く、く……」
そういや飲めなかったんだっけ?コイツ。
確かにグラスの酒が減ってないな。
新たな闖入者と話すコイツは悪びれた様子も見せず、淡々と言葉を返す。
言われた方は怒りで肩を震わせているが。
「とにかくとっとと店出るね。
こんなとこで油売ってる場合じゃないんですだよ。
早く立てよ、ロットン!」
「待て、シェンホア」
隣でロットンが片手を彼女の顔の前に翳し発言を遮る。
そのまま空いた手でサングラスのブリッジを上げてから厳かにこう告げた。
「グラスに酒を残して出ていくのはマナー違反……」
「飲めない酒を注いでもらう時点で、マナー違反よ!」
シェンホアが噛み付くように怒鳴る。
ああ、相当苦労してるな。
黒髪の美しい結構な美女なんだが、顔には怒りと共に疲れも見える。
何だか遣り取りに年季を感じるが、この二人もう知り合ってたんだな。
互いにフリーランスの立場だろうから、やはり最近の騒動を聞き付けて、この街にやって来たか。
……或いは誰かの依頼か?
「ああ!テメエら うるせえな!喧嘩なら外でやれや!
おい、ですだよ姉ちゃん!
アンタその野郎の連れなら何処へでもちゃっちゃっと引っ張っていけよ!
アタシらの邪魔すんじゃねえ!」
俺が二人の来訪理由を考えていると、後ろでレヴィが爆発した。
最近は大人しいものだったんだが、やはりレヴィはレヴィだ。
彼女の向こう側に座るベニーはどうしたかな。
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