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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#28 "finally the wizard comes on the stage"
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か。
面
(
つら
)
を改めて確認してみるが、やっぱり見覚えはねえ。
少し頬は痩けてるが、
中毒者
(
ジャンキー
)
ってわけじゃなさそうだ。
鼻筋の通ってる顔はそこそこの男前と認めてやってもいいが、あたしは嫌いなタイプだ。 ヒモでもやってりゃ似合いそうなチャラチャラした野郎。
それが近距離での印象だ。
そう、この野郎カウンターに座るゼロのすぐ隣にまで来て見下ろしてやがる。
ゼロも口を引き締めたまま、ただ相手を見上げるだけ。
「………」
「………」
二人とも何も言わずただ見つめ合うだけだ。
アタシもベニーも声を掛けられなかった。
この場にいる全ての人間が沈黙を保つ中、先に口を開いたのは優男の方だった。
「この街の空は高いか?」
「……ああ、飛びっきりにな。どれだけ罪を重ねても届かない程さ」
「重ねられた罪は
贖
(
あがな
)
うものだ。
天上へと到るための
階
(
きざはし
)
にはならん。
俺は身を持ってそれを思い知らされた」
「贖える罪など存在しない。それはただの自己満足に過ぎん」
「お前は正しい。
だがそれでも俺は求める。
何も得られずとも、全てが手遅れなのだとしても求め続ける。
我が魂に停滞は赦されないのだから」
「永劫に停まる事が叶わないのならば、今夜くらいはここで飲んでいけ。
安心しろ。この街は神に見放された魔都だ。
罪人が羽を休めるのに、ここほど相応しい場所はない。
咎人にも休息は必要だろ?」
「ふむ……いいバーボンはあるか?」
「勿論さ。バオ、彼にグラスを」
そうゼロから声を掛けられて、呆然と座り込んでたバオは慌てて立ち上がり、野郎にグラスを差し出す。
いつの間にかゼロの隣のスツールに座ってたソイツのグラスに、ゼロがバーボンを注いでやり、二人で飲み始める。
アタシは口を挟む事も出来ずに、ただその一連の光景を見ている事しか出来なかった。
いや、アタシだけじゃねえ。ベニーだってそうだろうし、その時店にいた全ての人間が固まったままだったに違いねえ。
ロアナプラじゃあよっぽどの事が起きねえ限り、一々動揺したりする事はねえ。
拳銃の発砲音なんざ車のクラクションくらいにしか思ってねえし、死体がそこらに転がってても、犬の糞よりも気にされない。
そんな街の連中でもさすがに今回のは驚きだったらしい。
頭の中身が沸騰しちまって戯言ほざく野郎も珍しかねえけど、片割れがゼロとなるとなあ。
「レヴィ……僕もう帰っていいかな?
ちょっと今夜はゆっくり休みたい気分だ……」
ベニー……
アタシも全く同感だけどさ。
この二人放っておいたら、それはそれで面倒な事になるような気がしねえか。
指で額を押さえながら頭痛を耐えてるアタシを尻目に二人は黙々と飲んで
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