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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#26 "expression of my feelings"
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片方の眉を上げながら横を向いて、惚けた事を言い出した横顔を睨む。
ゼロは淡々と話し続けた。カウンターの上のグラスを見つめたまま。

「今度のパーティーはな、かなり盛大なものになると思う。
バラライカも動く。張も動く。他の連中も動く。
ああ、勘違いするなよ。
だからお前に参加して欲しくないなんて言うつもりはない。
二挺拳銃(トゥーハンド)相手に心配するほど俺は馬鹿じゃない。
俺が言いたいのはな、 今度の一件がとことん後味の悪いものになるだろうって事さ」

あたしの視線の先でゼロは話し続ける。
決してこっちを向く事もなく身動き一つしないコイツの身体の中で、口元だけが動き続ける。
騒がしいはずの店内で、ゼロの声はやけにはっきりと耳に届いた。

「お前だから言う。
俺は襲撃犯と出会った。
襲われたんだ。つい24時間ほど前の話だ」

アタシは特に何も言わなかった。今更その程度じゃあ驚かない。コイツと付き合ってたら流石にな。

「で、その相手ってのが子供だったのさ。双子のな」

ゼロの話は続く。あたしはただ黙ってそれを聞いていた。互いにグラスを傾ける事もなく……













Side ベニー

え〜と、これ聞いちゃマズイ話じゃないのかな。

冷たいカウンターの上に頬を乗せながら僕はそんな事を考えていた。必死に目を閉じながら。

二つ隣の席から聞こえてくるゼロの話は未だ続くようだ。
すぐ隣のレヴィは一言も発していない。
二人とも完全に僕が寝てると思ってるなあ。

レヴィが苛々し出したんで、寝たふりして逃げようと思ったんだけど本当に逃げ出すべきだったか……
しかしまあ、ゼロも本当にトラブル引き寄せるよなあ。
街中の人間が探してるのに誰も見つけられない犯人とアッサリ出会うなんてね。
しかも無事生き残って、相手と会話まで交わしてしまうんだから大したもんだよ、本当に。

……で、どうしようか。この話。
ダッチにも教えとくべきかなあ。
その必要があると思えばゼロから話すか。
それ以前に僕が聞いちゃった事をゼロに言うべきか、どうかだよね。
ここで起き上がったら折角の話も途切れてしまうし……
先ずは話を全部聞く事か。
いい加減カウンターの冷たさが辛いんだけど何とか我慢するとしよう。
この話にはそれだけの価値がある。
今後どうするかは、話が終わってから考えればいいや。

そうして僕はカウンターの冷たさに耐え続けた。彼の話を聞く為に。彼と奇妙な双子の出会いの物語を。













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