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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#26 "expression of my feelings"
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【11月2日 AM 0:45】

Side レヴィ

「ふーん、そういう事か」

あれから、のらりくらり避わすゼロから何とか話を聞きだした。
本当にこいつは面倒臭せえ奴だな。
見ろよ、可哀想に。ベニーのやつ、カウンターに突っ伏しちまったじゃねえか。
全く苦労ばかり掛けてんじゃねえよ。
ダッチといい、ベニーといい本当に気のいい連中が揃ってるぜ。こんな奴の面倒見れるんだからな。

アタシの隣で静かにグラスを傾けてる相棒の顔を横目で流し見る。
涼しい顔してやがんな。こんな時だってのに。
しかし張の旦那が直々にお出まし、か。
こりゃ想像以上にやべえ状況なのかもな。

グラスのラムを舐めるように口に含む。
舌の上で酒を転がしながらカウンターの上にグラスを置き、その縁を指でなぞる。

「で?アンタとしちゃどうする気なんだ」

口内の酒を飲み下し、視線は正面に固定したまま訊ねる。

「どうする、か。
取り敢えずラグーン商会の仕事は開店休業だろうしな。
かといって余計な真似はしない方が無難ではあるんだが」

隣でゼロもまた正面を向いたまま答える。
うちの仕事がしばらく無さそうってのはアタシも同感だ。
今はどこの組織もそれどころじゃねえだろう。
ダッチの頭痛の種がまた増えんな。けど、余計な真似ねえ。

グラスの縁を軽く指で弾く。

「こっちが何もしなくても、トラブルは向こうからやって来るんじゃねえの。特にアンタの場合は」

アタシも人の事言えた義理じゃねえけどな。
ただアタシは自分から首突っ込んでいくタイプだけど、アンタは自分から動くような奴じゃあねえ。
それでも必ず騒動には巻き込まれるんだよな、アンタは。

「……確かに否定は出来んな。
俺は今回の一件に関わる事になる。結構面倒な形でな。
予言者を気取るつもりはないが、ほぼ間違いなくそうなる。
後はどうするかだな。事態が動くのを待つか、自分でかき回すか」

「お前が動くんならアタシも混ぜろよ。退屈はごめんだ」

互いに正面を向いたままの会話が続く。
こんな穏やかな気持ちで飲むなんて初めてかもしれねえ。内容は穏やかなんてもんじゃねえけどな。

「俺はマフィアの陣取り合戦に興味はない。ダッチだってそうだろう。
だがこの街の事は気に入ってる。
使い捨てにされるつもりもないが、張が協力を求めて来たらそれに答えるつもりだ。
バラライカあたりには睨まれるかもしれんがな」

陣取り合戦、か。
姉御んとこの奴を殺った連中の裏にはこの街の組織が絡んでいると見ているわけか。
まあ、妥当な考えだろうな。

「正直言えばお前にはこの件に関わって欲しくなかった」

ゼロがそんな事を言ったのは、それからラムを二杯飲み干した後だ。

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