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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#25 "Rock is wandering around the street"
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間は顔を青くして去っていくと。
もし、 それでも退かない勇敢な連中がいた場合は、ゼロの名を出すといいそうだ。
その名前を聞いて逃げないような奴は最初から俺達程度には絡んで来ないそうだ。
全くあの二人は大したものだ。
本当に……

「え?」

空を見上げていたままの首を下げ、煙草でも取り出そうかと立ち止まったその時。

俺は彼等に気付いた。

「子供? それも二人……」

道の先では黒い服を着込んだ二人の子供が並んで空を見上げていた。
一人は何か長い棒のようなものを抱えている。もう一人は手ぶらのようだけど、

「……珍しいな。この辺りで子供なんて」

ロアナプラでも当然ながら子供はいる。
中にはいわゆるストリートチルドレンもいて俺も財布をスラれた事がある。
と言っても彼の技術は拙く、盗られた時にすぐに気付いたが。
俺は特になにも言わなかった。
大した額が入っていたわけでもないし、それで彼が何日間か生き延びられるのなら、と。

もっともその財布はあっさり僕の元へと戻ってきた。
一部始終を見ていたレヴィが彼から取り戻したのだ。
レヴィ曰く、小さな悪事も見逃せばそれは大きな悪事へと繋がっていく。
あのガキがいつか海に浮かんだ時、お前は何て声を掛けるんだ?とまで言われた。
ゼロに言わせると生きる事は戦いであって、バレるような盗みをする奴は生き残る能力が 欠けている、だそうだ。

「えっと、君達どうかしたの?」

その時の彼以上に生き残る能力に乏しい俺は逞し過ぎる二人の顔を振り払って、夜空を見上げる二人に近付き声を掛けた。

俺の声に反応し、同時に視線を俺に向けてくる二人は髪の長さこそ違えど、顔の造作は全く同一にしか見えなかった。

双子、なんだろうか?

ただよく二人の服装を見れば、髪の長い子の方はスカート姿だが、髪の短い子は半ズボン姿だ。
確か一卵性なら男女の双子というのは、あり得なかったと思うけど……

「おにいさん?僕達に何かご用かな」

髪の短い子の方が訊ねてくる。
澄んだ笑顔を向けられ少しドキリとする。
服装も小綺麗なものだし、言葉もこの辺りの訛りがない。何処の子なんだろう?

「あ、えっと、怪しいものじゃないんだ。
こんな夜中に子供が歩いていたものだから、ちょっと気になって」

後から思えばこの時の俺は十分に怪しい。
言葉もしどろもどろで、汗も出てたんじゃないだろうか。
日本だったら通報されてもおかしくないレベルの不審人物だ。
自分でも何故だか分からなかったが、二人の子供を前にしてやけに緊張していた。
本当に何故なんだろう?
可愛らしい無害な子供を目の前にして、こんなに緊張するなんて。
別に危険な獣の檻に閉じ込められたわけでもないというのに。

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