第19話 猫神様と黒い魔法使い(3)
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の光球は、彼女の呟きを聞きとり咄嗟に手を伸ばしたなのはと、その後ろにいた何も知らないシャムスを巻き込み、地面を削り取りながら膨らみ、そして弾けた。
光が消えた後には倒れ伏したシャムスと、空中で意識を失い地面へと落ちてくるなのはの姿。
「な…のは……、あぁぁあっ!」
それを見た純吾が、無理矢理に体を起き上がらせ駆ける。
段々と地面へと近づいていく彼女を、歯を食いしばって見上げつつ疾走する。地面が陥没するほどの踏み込み、それで得た力で体を大きく跳躍させる。
落ちてくるなのはを受け止め、彼女が地面に激突しない様に抱え込んだ。
「いけない、2人ともっ!」
その時、小さい体で懸命に走ってきたユーノが純吾の着地する地点に緑色の魔法陣を展開した。それによって純吾は大きな衝撃を受けずに地面に降り立つ事ができた。
しかし、限界まで酷使した体はそこで本当に言う事を聞かなくなり、純吾はその後、少女がシャムスの中からジュエルシードを取り出すさまを見ている事しかできなかった。
少女が淡々と封印魔法を準備して発動し、シャムスが電流の縄に拘束され悶える。
空から数え切れないほど降ってくる電撃を浴び悲鳴をあげるのを、ただ見ている事しかできなかった。
「ど、ぉして………どうして!?」
かき抱くなのはを持つ手に無意識に力を込め、純吾は無感動にジュエルシードを封印した少女に向かって叫んだ。
その声色には以前のような怒りよりも、自身が誓った事――家族を守れなかった苦しみに悲しみ、そして「ごめんね」と呟いた少女の真意が、本当に分からないというような様々な感情が入り混じったものだった。
しかし少女はそれに答えない。少しだけ暗い、悲しんでいるかのような表情で純吾を一瞥すると、空へと飛び立ち、やがて見えなくなってしまった。
「必要…。シャムスや、なのはが怪我をして……。それでも、必要」
彼女が飛び去って行った後。
ぽつりぽつり、純吾が壊れたテープレコーダーのように少女の“必要”という言葉を繰り返す。
純吾には分らなかった。
あそこまで、人を傷つけてまでかなえたい願いがあるという彼女の心が。
勿論、今までそんな欲望に直面した事がなかったわけではない。
ここに来る前、崩壊したあの世界では、誰かれもが自分が生き残るために食料を、医療品を、生活に必要なもの全てを奪い合っていた。
そこまできて初めて、人は人を傷つけてまで自分の望みをかなえようとする。
――ではあの少女は、こんな平和な世界の中ただ一人、そんなにも絶望し、追い詰められた状況にあるとでもいうのか?
ぐるぐるぐるぐると、思考が空回りしてまとまらなかった。
「…………んご。純吾!」
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