第19話 猫神様と黒い魔法使い(3)
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轟音に負けじと純吾が叫ぶ。
「彼女の中のジュエルシード…、私にはあれが必要だから」
少女はそれに淡々とした、機械の様に平坦な口調で答える。
その言葉は、純吾の感情を更に爆発させた。
シャムスを含むこの世界での縁を守ると彼は誓った。だが、彼女の言葉や表情はまるで無慈悲に機械的に、彼の大切なものを奪ってやるとでもいいたげなものに見えたのだ。
純吾の防壁に叩きつける拳の早さが増していく。それに比例して防壁が段々ときしみをあげ、少女の顔から余裕が無くなる。魔導師でもないのに、それでも自分に対抗しうる力を前にして、彼女はどう対処したら良いか困惑していた。
「シャムスはっ、ジュンゴの家族なのにっ!」
拳を叩きつけながら、純吾は叫ぶ。
その言葉に少女はどうして彼が必死になっていたのかを悟った。その理由は自分と全く同じで、だからこそ戦いの最中にも関わらず、彼女は決して見せまいとした弱音を呟いてしまったのかもしれない。
「……私だって、母さんのために」
その少女の言葉に、純吾の振り上げた拳が止まる。全身を駆け廻っていた怒りが霧散するのを感じながら、純吾は目を見開きながら防壁越しに自分を見上げる彼女の顔を見た。
しかし、それ以上彼女の口から言葉が紡がれる事は無かった。
そのまま元の無表情に戻った彼女はより強く展開した防壁で純吾を押し、地上に叩きつけたのだ。
油断していた所に容赦のない一撃を加えられた純吾は、地面にぶつかった衝撃に空気をありったけ肺から吐き出す。
すぐさま仰向けに倒れた体を起き上がらそうにも、衝撃の余波が抜けきらない体は、震えて言う事を聞かない。
少し表情を暗くしそれを見ていた少女は、空中でシャムス、正確にはその背に乗ったまま、警戒をあらわにして杖を構えるなのはに目を向けた。
「ロストロギア、ジュエルシード。……いただいていきます」
『Scythe form』
自身の杖に鎌状の光を纏わせ、一直線になのはに向け駆け抜ける。
なのはも、シャムスに攻撃が当たらないよう彼女の背を飛び立ち、あえて前面に立ち防壁を作って少女の一薙ぎを受け止める。
「純吾君まで傷つけて、どうしてこんなことをっ!」
鎌と防壁がぶつかる事で生じる火花を挟みながら、困惑したようになのはは叫んだ。
だが、言葉として返答が返ってくる事は無く、少女の瞳は特に揺れない。彼女は腕に力を込め、なのはを後方へ吹き飛ばす。
「バルディッシュ」
『Photon lancer』
シャムスに向け構えた杖に、先ほどよりも大きく強い光が集まりだす。
光が充分な大きさになったことを確認した彼女は、
「ごめんね……」
呟きと共に、光球を発射した。
そ
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