第17話 猫神様と黒い魔法使い(1)
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事は出来なかった。
場所は客間に移る。
客間は壁の一面をガラス張りにして、照明が無くとも、太陽の光によって部屋の隅々まで明るさを保っている。
またガラスの向こうには屋敷裏の森が見え、部屋の中にもガラスに沿うようにして観葉植物を置くなど、自然を間近に感じる事の出来る部屋である。
「それにしても、相っ変わらずすずかの家は猫屋敷ね」
そんな部屋の真ん中に一つ置かれたテーブルに両手で頬杖をつき、アリサは目の前をのんびりと通り過ぎる猫を見やった。
今3人が座っているテーブルの周りには、10匹は超えるだろう猫がくつろいだり、歩き回ったりしている。これでも普通の家なら多すぎるくらいだが、他の部屋に行けばさらに多くの猫がいる。
彼女の言うとおり、猫屋敷と言うのがふさわしい月村邸である。
「ふふっ、アリサちゃんのお家と一緒だよ。知り合いの人から貰ったりしてたら、いつの間にかこうなっちゃった」
「確かに、うちもそんな感じだわ。……最近も一匹新しく来たしね」
ちらりと純吾の方に目をやる。その視線に気が付くも、何が言いたいのか分からず不思議そうな顔をする純吾。
「あぁもうっ! パスカルよパスカル! あいつあんたの事も御主人だって思ってるから、すっごい淋しがってるの! だから暇があったら家に来て、顔くらいみせてやんなさい!!」
顔を赤くしてまくし立てる様なアリサの説明に、純吾が「あぁ」と、ポンと手を打って納得がいった様子を見せた。
そこで更にアリサが続けようとするが、チリンという軽やかな音と共に中断されてしまった。
「シャムス」
純吾がそう呼ぶと、橙色に近い毛並みに青い眼をした小さい雌猫がたたっと駆けより、軽やかな跳躍で純吾の胸に飛び込んで行った。それを純吾は片手に抱き、かりかりと喉をくすぐり始めた。
「あぁこら返事くらいしなさいよ……って、へぇ。すごいなつき具合ね」
みゃ〜、と純吾の腕の中で気持ちよさげな鳴き声をあげる猫――シャムスを見て、アリサが毒気を抜かれた様子になる。
「うん、シャムスは最近家に来たばかりの子なんだけど、純吾君が家にいるときはいっつも傍にいたがるんだ」
アリサの様変わりぶりにおかしさを感じたすずかは、くすくすと小さく笑いながらそう説明をする。
そして何の気なしに、橙と純吾に視線を移した。
かりかりかり、ごろごろにゃ〜ん。
彼女たちの前で純吾はひとしきり橙を撫で終わると、シャムスを床に下ろした。
そして唐突にポケットから茶碗蒸しを取り出し、シャムスの目の前に置く。そして自分も椅子から離れてしゃがみこみんで、彼女と目を合わせた。
「……今日こそは」
そう呟く純吾の目には、期待のこもった光が宿っ
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