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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
chapter 02 : stress
#23 "Bacchus"
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かったけど。
「……で、どういう事だよ?」
低く押さえた声でゼロに訊ねるレヴィ。それはいいんだけど……
「なに、ただの世間話さ。
張
(
あれ
)
も最近色々忙しいみたいだからな。
少し息抜きにでも来たんだろ」
……ゼロ、頼むからレヴィを怒らせないでよ。
最近彼女の機嫌が良いって、こないだもダッチと祝杯あげたんだから。
二つ隣の席で悠然とグラスを傾けるゼロ。そんな彼を見ながら、グラスを握るだけなのに明らかに必要以上な力を込めてるレヴィ。
そんな二人からそっと目を離し、僕はグラスを目の高さまで捧げて祈った。
偉大なる酒の神よ。どうかあなたの忠実なる信徒にお慈悲を。取り敢えずこっちにとばっちりが来ませんように………
僕は生涯初めて真摯に祈った。それはもう、心から真剣に。
【11月1日 AM2:36】
Side ロック
「………」
眠れない。
狭いベッドの上で何度も寝返りを打つが、眠れないものは眠れない。
真っ暗な部屋の中、仰向けになり手の甲を額に当て天井をぼんやりと眺める。
今は2時か、3時頃だろうか。
一々時計を確認したりはしない。
別に時間を確認したところで、それで眠れるわけじゃない。
特に朝から急ぎの仕事があるわけでもない。仮に仕事だったとしても……
暗闇に目が慣れだしたか、うっすらと部屋の天井が見えてくる。
高い位置にある天井へはどんなに手を伸ばしても届かない。
そう、どんなに手を伸ばしても。
「………」
俺はこれからどうして行けばいいんだろう。
今更ながらにそんな事を考える。
この街に残る事は決めた。生きていくと決めた。ラグーン商会の一員として彼等と共に歩くと決めた。
で、その先は?
その先はどうする。お前は何をする。お前には何が出来る。
頭の中をグルグルと言葉が回る。思考が回る。疑問が回る。
酔いにも似た感覚を覚え、思わず上半身を起こす。
目を閉じ、鼻から息を吸い込み、口から吐く。
一度息を吐き、ゆっくりと目を開けてから再びベッドに倒れ込む。
頭の中を駆け巡る疑問は一旦静まってくれたようだ。
だが、それでも眠れるわけじゃない。
仕方なく天井を眺めながら、 たった一人の事を考える。
ロアナプラに来て出会った・・・の事を。
あんな奴には今まで出会った事もなかった。
あのまま日本にいたんじゃこれからも出会わなかっただろう。
・・・は本当に強くて、時に厳しい事も言うけれど、いつも俺を守ってくれていた。
皆からも頼りにされていた。街の有名人でもあった。その背中に憧れた。物語の主役に思えた。
・・・に見て欲しかった。
・・・に認められたか
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