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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#22 "baby face"
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元からそれほど疑ってたわけじゃないしな。
今日は突然訪ねてきて済まなかった。だがお陰で有意義な時間を過ごせたよ」
そう言って椅子から立ち上がる。同様に立ち上がるダッチに軽く挨拶をしてからドアに向かう。
さて、これからどうするかだな。
まずは連絡会を開かねばなるまい。バラライカの様子も確認しておきたいしな。
街の人間が関わっているのは、ほぼ確実だろう。
だが出来ることなら騒ぎは最小限に留めておきたい。今は派手な抗争などしている時では…
「張」
聞こえてきたのは、背中から俺を呼び止める声。
今まさに部屋を出ようとしていたところを狙って声を掛けたか……
「俺にとって一番大事なものは家族なんだ」
ゼロの声は全くいつもと変わらない。いつもと変わらず淡々と紡がれてゆく。
「そして俺にとって家族と呼べるのはラグーンのみんなだけだ。
ダッチ
ベニー
レヴィ
ロック
この四人が俺の家族だ。
そしてな、俺は家族に迷惑をかけるような真似はしない。それくらいには成長した」
成長、か。
その言葉を聞き、"あの時"が脳裏に思い浮かぶ。
奴に、ゼロに銃を向けられた"あの時"の事を。
もう十年、いやもう少し前か。
「過去を忘れるつもりはないが、過去に囚われるつもりもない。
"あの事"はもう終わった事だ。
俺達はもう終わらせたんだよ。
俺がアンタに銃を向け、アンタが俺に銃を向けた"あの時"に。
それでも俺は生きてる。
それでもアンタは生きてる。
それが全てさ」
背中から届く声が止まる。
それで話を終えるつもりか?
俺は肩越しに僅かに振り返りながら、訊ねてみることにした。一言だけだったが。
「お前はそれでいいのか」
返事は即座にやってきた。
そう訊ねるのを分かっていたかのように。ずっと前から用意していたかのように。
何年も前から準備していたかのように。
「いいさ。
それで構わないと俺はそう決めた。
"彼女"がどう思うかは知らん。
冷たいやつと怒っているかもしれんし、お前はそういうやつだったのかと呆れているかもしれん。
だが、俺はそう決めた。
ベイブ。
この先俺があんたに銃を向けるとしたら、それはラグーンのみんなに手を出された時だけだ。
それ以外の理由で俺が動く事はない。
分かったか」
「……俺をベイブと呼ぶな。タイニートット」
それだけ言って俺はデッキを出た。
やらなきゃならん事はいくらでもある。
問題が一つでも片付いたのは収穫だ。
狭苦しいラグーン号の中を歩きながら、俺は部下に出すべき指示を考え始めていた………
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