暁 〜小説投稿サイト〜
その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#22 "baby face"
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
【11月1日 PM 4:28】

Side 張

「子供、か……」

顎に指を添えながら今聞いたばかりのダッチの話を思い返す。

子供を刺客に使うってのは、確かに妙手ではある。
ヴェトナムのゲリラに限らず、今じゃあ少年兵なんて珍しくはない。
ただそれはあくまで戦場での話だろう。
いくらこの街が『魔窟』などと呼ばれていたとしてもガキの殺し屋なんて、そうお目に掛かれるものじゃない。
油断を誘うというなら良い手ではある。
しかし、

「ガキがやったのか、あれを……
お前らは見てないから分からんだろうが中々の力作だったぜ。
最近のガキは随分情熱的に育てられてるんだな。
俺も気づかん内に歳を取ったのかな」

軽い言葉を吐きながら、今朝確認してきた現場の情景を脳裏に描く。
あれだけの血風呂(ブラッドバス)なんて久し振りに見たぜ。
しかもあれは確実に殺しを楽しんでる奴の仕業だ。
傷から判断するに、銃と刃物の二種類が使われているのも間違いない。
大体"そういう"輩は自分のお気に入りの道具を使うと相場が決まってる。
と言う事は二人以上いたのか?そんなキレてるガキが?
或いは先に奇襲させてから、別の奴が援護したか。
ガキを匿ってる奴がいるのなら、ソイツらが現場まで同行していたとしてもおかしくはない。
監視目的も兼ねてな。

「まあ、別に子供とは限らんがな。
女かもしれんし、老人かもしれん。
目が見えない風を装う、手足が不自由な奴を演じる。油断を誘うにも手はいくらでもある。
それにもしかしたら、NINJAでも雇ったのかもしれんぞ。
だとしたら参るな。
俺もさすがにNINJAとは戦った経験がない。
何せ"東洋の神秘"だからな。
彼等は変装の名人なんだろう?
確か『映し身の術』だったかな。それを使ってあんたの部下を油断させたんじゃないのか」

ゼロ(コイツ)は頭も切れるし信頼も置ける奴なんだが、数少ない欠点は冗談のセンスがいまいちな ところだ。
全く惜しいな。
見ろ、ダッチも呆れて溜め息ついてるぞ。まあ、可哀想だから付き合ってやるか。

「フム、だが相手が忍者というなら俺達の敵じゃないな。
さすがに一族の秘密なんで、あまり詳しくは話せないんだがな」

「なるほど。三合会の張維新には未だ俺達の知らない顔があるというわけか。さすがだな」

互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。
コイツもまだまだ未熟な部分があるが、あと十年も磨きをかけて俺の下で学べば対抗馬くらいには……

「ああ、取り敢えずうちのもんへの容疑は晴れた。そう思って俺は安心していいんだな?」

正面から届くダッチからの声に向き直る。全く厄介な部下がいると、上の者は大変だな。

「ああ。その点は心配しなくてもいい。

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ