第一部
死と共にはじまるものは、生である
芽吹いた孔雀草
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ほら、約束の駄賃だ」
立ちあがって近づいた俺にようやく気付いて何かを渡される
・・・飴玉だった
ひとつふたつどころじゃなく、五パックぐらいあった
何故こんな大量にと思い、飴の袋を確認すると賞味期限が今日だった
歩き出しながら話しかける
「・・・食べきれないから?」
肩をすくめ、呆れたように答えられた
「仕事の相方が預けていって、そのまま忘れているみたいなんでな」
飛段のおやつを手に入れてしまった
ジャシン様に呪われないだろうか、心配だ
でも投げ飛ばされただけでこんなに貰うのも悪いな・・・
一度も血を拭ったことのない、新しいタオルを角都に差しだす
「返り血、拭ってください」
「・・・あぁ、頂こう」
飴袋を取り出してからも外套のなかを漁っていたのを見て感づいた
こいつタオル忘れてやがる
予想は正しく、素直にタオルを受け取って返り血を処理し始めた
横目で眺めていると、潮の匂いが辺りを漂い始める
目を凝らせば海から反射する光が見えた
ここからなら、走って町にすぐ入れる
角都に向き姿勢を正して一礼した
「タオルは捨てていただいて構いません、飴ありがとうございました!
失礼します!」
言うが早いが海に向けて走りだす
俺は海が見たいんだ、海は初めてでテンションあがってる子供なんだ
青春少年なんだと自分に言い聞かせて限界まで走る
海だーと叫びつつ走り去る、そう俺はうみんちゅだ!
背中から生温かい眼差しを感じたが決して振り返ることはなかった
町に入り、茶屋でトイレを借りた瞬間、今までにない量を吐血して死にかけた
◇後日◇
「飛段、お前の飴は処分したからな」
「飴?んなもん渡してたっけ?」
「・・・やっぱり忘れていたか」
「んー?まぁいいけどよォ・・・処分って捨てたのか?珍しいな」
「いや、海が好きな子供にやった」
「・・・?ところでそいつらは?」
「子供が近くにいたから、攻撃を仕掛けることのできなかったヘタレ共の死体だ」
「・・・子供?」
「あぁ子供だ」
「そっかー子供かー」
「海が大好きなんだ」
「お前が?」
「違う」
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