第一部
死と共にはじまるものは、生である
芽吹いた孔雀草
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ちが大勢着いてきている
馬車に同乗しているのは余程の老人か病人ぐらい
1人だけでは確実に護衛の上忍に怪しまれただろうが、今回は大丈夫らしい
馬車に乗せるよう交渉したときの商人
口から血を流していたコンを見て、随分と気の毒そうにこちらを見ていたあの顔
どこからどう見ても病人といった子供に歩いてついてこいなどとは言えぬ小心者
良い拾いモノをしたと思った
あちらから進んで兄弟として行動するため、幻術をかける手間がいらない
だからといって粘土菓子の件は許さないが
正直に言って、このままコン諸共すぐに爆破させたい気持ちでいっぱいだ
しかし下準備もなしに無計画の爆破というものは美しくない
己の美意識を優先させ機が熟すのを待っているのだが・・・どうにも調子が狂う
文字通り現在も血反吐を流し続ける少年が原因だと・・・
・・・現在も?
「コン!?お前大丈夫か、うん!?」
粘土が血に染まり、抑えた手の間から血が流れ出している
顔色も悪く、医者を呼ぶべきかと考え粘土を片づけておく
「・・・げぇ・・・酔った・・・」
青白い(鬼鮫には負けるけど、うん)顔が血に染まった
しかしコンは意外と平気そうに持っていたタオルで血を拭いだす
「乗り物酔いで吐血すんのかお前は」
上着が血みどろになっているので剥ぎ取ろうと手にかけると振り払われた
(・・・なんかムカついたぞ、うん・・・)
「自分で着替えれるから後ろ向け」
見て気持ち良いものじゃないぞと追い払われる
素直に後ろを向き、衣擦れの音が聞こえ始めた時振り向いた
ただの、仕返しのつもりだった
見られたくないと言った意味を考えもせず、生意気な子供をからかってやろうと思った、ただそれだけだったのだ
青白く細い体に浮かぶ刀傷、縫い痕だらけの背中
腕や首筋に浮かぶ注射痕、拷問でも受けたのか
小さな体に不釣り合いな夥しい傷跡
そのなかでも鮮明に映ったのは、まるで、爆発でも受けたかのような火傷のあと
芸術家としてのオイラが、ただひたすら美しいと感じた
脳裏に浮かんだコンへの忍び疑惑など、捨て去るほどの美しさだった
◇
野盗や獣に襲われることなく、無事に雷の国へとたどり着いた
長い間馬車に揺られていたせいで体のあちこちが軋みだす
粘土マカロン事件より口数が減ったダラーとともに商隊に別れを告げ、広場まで歩きだす
片手で広げた地図を確認すると、この町から一日ほど歩いたところに港町があるようだ
ダラーの目的地は知らないが、ここらで兄弟ごっこは辞めてお別れとしよう
「にい・・・ダラー、ここまで面倒見させて悪かったな
俺はここから港町に行くからここでお別れだ」
立ち止まって
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