第一部
死と共にはじまるものは、生である
芽吹いた孔雀草
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ガタゴトと音を立てて馬車が走る
雷の国、国境近くの街道を進む商隊
いくつかの馬車を囲む護衛の忍びたち
揺れる馬車の出入り口から外を伺うと、何人かの忍びと目があった
何気なしに会釈してみると、彼らも同様に返してくれる
年のころ12,3歳ぐらいだろうか、下忍になりたてらしく、何処か様子が危うげだ
長く続く街道の景色に飽きが来て、なかへ引っ込む
中は商隊の荷物以外にダラーが作り出した粘土細工で埋め尽くされている
丸い蜘蛛を手に取り眺め、徐に潰し捏ね直す
もにもにもにもに・・・
「まかろーん」
前世でよく女子が好んでいた円形の菓子をモチーフにしてみる
吐血した血を練りこみ赤く染め上げるとまるで苺のマカロンのようだ
食いたくない
「・・・何だそれ」
ダラーの問いかけを無視し、旅のおやつにと思い作ってきたマカロンの袋に粘土を混ぜる
思わず、といった風に手を伸ばしたダラーを制止、出入り口にかけてある布をあげ、近場にいた下忍の少年と少女に声をかける
「あげる、はずれ付きだけどね」
背後から性格悪ぃぞ、うん等と聞こえてきたがスルーである
2人は顔を見合わせ、少し離れた場所にいる担当上忍らしき男を伺う
男は少々渋ったが、問題ないとでもいうように頷いた
いただきます、と丁寧にマカロンをとる2人
様子が気になったのかダラーも顔を出したので、彼にも袋を渡す
「ほれ、兄ちゃんも食え」
渋々袋に手を入れマカロンをつかみ取った
「変わったお菓子だけど美味しいわ」
何処の世も女子はこういうものが好きらしい
マカロンアイスのほうが好きなんだけどな
「アーモンド使ったお菓子だよ」
赤は苺で緑は抹茶、茶色はチョコだよと説明する
少年は抹茶をとったが少々苦かったらしく、チョコをあげた
「アーモンド?」
きょとんとした顔で呟かれた
あれ、アーモンドプードルは売ってたのに、知らないのか?
「・・・落花生?」
どう説明すればいいのか分からなくなったので、誤魔化す
下忍との和気あいあいとした会話に上忍は微笑ましく眺めている
会話に交じれなかったスリーマンセルの残り1人の少年が少し寂しげだ
甘いものがあると会話が弾んでいいな、と久しぶりの賑やかな会話に和む
・・・そういえばダラーは何マカロンとったっけな・・・
ふと後ろを振り返ると、口元を押さえて蹲るダラーの姿
えづく音が聞こえてくる
「お、兄ちゃんがはずれだ」
「うわー・・・カワイソー・・・」
「なぁなぁ、はずれって何味?」
半笑いで訪ねてくる少年少女
そんなに笑ってやるなよ
「粘土With俺の血」
とびきりの良い笑顔で親指を
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