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その男ゼロ ~my hometown is Roanapur~
#20 "I follow my heart and intuition"
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、事件そのものは何一つ片付いちゃいない。
お前らだから正直に言っちまうが、結構俺も参ってる。
犯人の目星は全くついてないって有り様でな。
バラライカも今はまだ耐えてくれているが、その我慢もいつまで持つか……」

旦那が椅子に(もた)れながら、天井に向かって独り言のように言葉を吐き出す。
伊達者の旦那がここまで明け透けに話すってこたあ、こりゃ事態は俺の想像以上に深刻なようだな。

「今更こんな事を言うのも信じてくれんかもしれんが、お前が犯人である可能性は低いと最初から思っていた。
殺られた二人の検死報告に依れば、体内からは7.62mm弾が大量に出てきたそうだ。
おまけに全身を大型の刃物で派手に切り裂かれていたらしい。
"前"にやったのか、"後"からそうしたのかはちょっと分からんそうだがな。
いずれにせよ、明らかにコイツは楽しんでる。
行為そのものをな。
仮にお前さんが"そういう輩"を想定して偽装したとしても、あそこまでの真似はまず無理だ。
犯人は本物のイカれ野郎だ。間違いない」

………本来であれば安堵するべきところなんだろうが、些か腑に落ちねえもんも感じてた。
そこまで断言できんなら何故ゼロを疑うような真似をしたんだ?
"あの時"の事まで持ち出して。

「ふむ。
だとすればアンタが想定しているのは他所者、でいいのかな?
さすがの我がロアナプラの街にも、そこまでやりきれる奴は」

「居ない、な。
殺しだけならともかく、既に一ヶ月以上も逃げおおせている。
さすがに、」

「隠れ通すのは難しい、な。
だったら結論は一つだ。この街の中に、」

「匿ってる奴がいる。必然的にそうなるな」

「そいつは変化を望んでいるんだろうな。
現状(いま)に不満があるのさ。
アンタやバラライカがこの街を支配しているという現状にな。
ふっ
アンタとしちゃ頭が痛いところだな」

「だからここへやって来たわけさ。
知っているか?
何処かの国じゃ『遠くの親戚より近くの他人』という格言が……」

ラグーン商会(うち)は運び屋だ。
情報が欲しいなら他所を回れ」

「冷たいな。お得意様にはもっとサービスするものだぞ」

「なら、今度レヴィをあんたのとこに送ってやろう。若い衆を鍛えてもらえよ」

「生憎俺は部下には慈悲深い男でな。ライオンの檻に大事な部下を放り込むようなまねは出来んよ」

「それは残念だ。なら……」

「ああ、ちょっといいか」

黙って聞いてたんだが、いよいよ堪り兼ねて口を挟ませてもらった。二人の視線が此方に向かうのを眼で確認してから再度口を開く。

「会話が弾んでるところを邪魔して済まんが、話が脱線し過ぎてねえか?
張の旦那だって忙しい身だろう。
ゼロ
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