第二話 群星集まるその六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「それでは。城壁を」
「そうしてくれ。これでよいな」
「ううむ、金もあり申すか」
政秀は暫し沈黙して話を聞いていた。だがここでまた口を開いて言った。
「前まで苦労していたというのに」
「いやいや、今もないぞ」
吉法師はここでこう言うのだった。
「ある筈がなかろう」
「ないとはいいましてよ」
「要は使い方よ」
それだというのである。
「それなのじゃ」
「使い方ですか」
「爺の見たところ田と市だけで手が一杯だったな」
「むしろ大丈夫ではと思いましたが」
「そこをじゃ。この者に任せてみたのじゃ」
その池田を見ての言葉であった。
「そのうえでなのじゃ」
「池田勝政にですか」
「左様、財政ではかなり立派な者じゃ」
「恐縮です」
池田もこう述べてきた。
「吉法師様に任せて頂きまして」
「それでこうしてじゃ。城壁まで工面できた」
「しかしそれでも後はどうされるのですか?」
「安心せい、政での金は戻って来る」
心配無用というのだった。
「それも注ぎ込んだものよりずっと多くじゃ」
「だからこそ金を注ぎ込まれるのですね」
「戦をするのにもまずは金がいるな」
吉法師は既にある。このことをわかっていたのだ。
「そうだな」
「はい」
政秀は主のその言葉に頷いた。まさにその通りである。
「左様でございます」
「ならばじゃ。その金を作るものに金を注ぐのは当然じゃ」
「政あってのことだと仰るのですね」
「如何にも。それで間違っておるか」
「その通りでございます」
政秀は珍しく主のその言葉に頷いた。
「ではまずは田と市をですか」
「それと城壁じゃ」
この三つをだというのだ。そしてそれで終わりではなかった。
吉法師はさらにだ。こうも言うのであった。
「そして二郎よ」
「はっ」
九鬼だった。彼が応えた。政秀はここで彼が二郎と呼ばれたことに少し怪訝な顔になった。
「二郎といいますと」
「うむ、この者は九鬼家の次男でな。それでなのじゃ」
「それで二郎なのですか」
「左様じゃ。それでわしは二郎と呼んでおる」
そうだというのである。
「嘉隆と呼ぶよりそちらの方がしっくりきてな。それでなのじゃ」
「綽名というわけですか」
「別にそれでもよかろう」
「そこまで言いはしませぬが」
政秀もそこまで言うつもりはなかった。吉法師は家臣を幼名や綽名で呼ぶことが殆どである。しかし政秀もそこまでは言わないのだ。
そしてだ。あらためて主とその九鬼のやり取りを見る。するとだった。
「そなたは次には五郎左を助け堤を整えよ」
「堤をですね」
「左様、領地の堤を全て整えよ」
こう彼に命じたのである。
「五郎左を主としそなたを従とする」
「わかしました」
「そなたは水に詳
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ