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魔王の友を持つ魔王
§小ネタ集part2
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可能性がある混沌領域(カオスルーム)。天井に届くまで積み重ねられたゲームの山(バベルのとう)は、数知れず。ある種の芸術すら垣間見られる開かずの間。そこに入ったのはよりにもよって玻璃の媛。黎斗の精神ダメージはいかほどのものか。大半はエルの人間変化の為の資料だが、黎斗の私物もあったわけで。

「うわああああ……」

 頭を抱えて転げ回る黎斗に、生温い視線を向ける媛。

「まぁ、黎斗様も殿方ですしそれらは全て処分しましたし……って違います違います。権能を書いていただいた書類を紛失してしまいすみません。古老のいずれかが持って行ったものだと思うのですが……」

 油断しました、と申し訳なそうな表情の媛。ゲームを処分したことをサラリと言うあたりちゃっかりしている。

「処分…… ま、まぁいいさ、うん。権能の紙もさ、なんとかなるっしょ。あれはもともと僕が表舞台に立った時用だもの。見られても致命傷とならないレベルでしか書いてなかったと思う。切札(アーリマン)、邪眼(サリエル)、不滅(ヤマ)、主力(スーリヤ)あたりは書いたかもしれんけど。ただ僕が神殺しと公表されるのは困るから各方面の間諜を増やしてもらえると嬉しいかな」

「畏まりました。仰せのままに。今回はまことに申し訳ありませんでした」

 玻璃の媛の謝りっぷりはこちらが罪悪感を覚えるレベルだ。本当、美人は得である。大きく構えていられるのも、古老の面子なら須佐之男命の下で一枚岩であるだろう、という考えがある。それならば須佐之男命の友人たる黎斗の扱いも決して悪くはならない筈だ。古老など須佐之男命以外では黒衣の僧と玻璃の媛君くらいしか知らないが。

「用件はもう一つ。黎斗様の保険証を始めとする正式な(・・・)身分証作成が終了いたしました。よほどのことがない限り偽造発覚はないかと」

 たしかにこれの受け渡しをするなら玻璃の媛に出てきてもらわねばならないと、黎斗は一人納得する。なにせ黎斗が神殺しであることを知る関係者の数は少ない。これは機密保持には有利に働くが人員の面でみれば圧倒的に不利だ。偽造を実行した方々が探ったところで真相には辿り着けないように配慮してあるに違いない。幽世に呼び出す、という手を用いなかったのは気を使ってくれたのだろうか。わざわざ面倒くさいことをしてくれて感謝である。

「確かに。ありがと。これでよーやく堂々と旅行が出来る」

 各種身分証明書を受け取って黎斗は安心したように息を吐く。これでようやく男性職員の受付も行ける。いままでディオニュソスの権能”葡萄の誘惑(マイナデス)”頼みだったため女性職員が受付に居なければアウトだったのだ。最悪の場合は認識阻害で強引に侵入していた彼にとってこれでようやく大手を振って各種機関を利用できる。

 数日後
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