§15 知りすぎた者
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の君、本日はお助けいただきありがとうございました」
「……」
開口一番に言われたのは、祐理からの感謝。だがそこには、聞き捨てならない単語が入っている。
「えーと、万里谷さん? 羅刹の君って」
「エルさんに全て教えていただきました。勝手に事情をお伺いしてしまい申し訳ありません」
祐理の言葉に口が外れた。黎斗はすごい速度でエルの方をを見る。
「エルー!?」
「ご、ごめんなさいぃ…… エリカさん相手に隠し通すのは無理でした……」
駆け引きになれていないエルは黙秘以外の行動をとらずポーカーフェイスも出来るわけではない。そんなエルが権謀術数に優れるエリカ相手に情報を隠し通すのはやはり無理だったようだ。驚きを素直に顔に出してしまう時点で、敗北は決定していた。彼女ならばエルの表情の一つ一つから見破ることも不可能ではないだろう。大人しく白旗だ。
「はぁ……負け、か。では改めて自己紹介。かなり昔に神殺しになりました、水羽黎斗です。おそらく現存する同胞の中では最長なんじゃないかな? 異名っぽいのもあったけど、それを呼ぶ者はみんな死んでると思う。何世紀も前の話だし。だから普通に呼んでもらって構わない。あぁ、この話オフレコね。口外しないで。あと録音とか盗聴も禁止の方向でよろしく。普段と同じように接してちょうだいな」
あっけらかんと答えてみる。今まで必死に隠してきたのだ。もっと隠すと予想していたのだろう。呆気にとられる三人の様子を見て、思わず彼はニヤリと笑う。そんな微妙な空気の中で、果敢にエリカが切り込んでくる。
「御身が我らの王、草薙護堂の周囲にいるのはなぜでしょう?」
「友達だからねぇ。正体を告げないのは護堂が”僕”の存在を知って安心することを防ぐためって理由もあるんだよ? 気の緩みは死を招く。もうちょっと強くなったら言おうかな。今僕の存在を知らせることはマイナスにしかならない。もっとも、僕が魔術結社とあまり関わりたくない、という理由の方が大きかったりはするのだけれど」
護堂と敵対する、と答えたらどうする気だったのだろうか。いや、考えるだけ無駄か。そうしたらこの少女達は確実に黎斗を敵と見なすだろう。
「……さて、重要情報大安売りしたワケですが」
がらり、と黎斗の雰囲気が変わる。彼女たちにこの権能を使いたくはなかったがやむを得ない。知り合いに対する精神操作を嫌がっていたら今までの苦労が水の泡だ。精神を破壊しないように加減。宝石店での換金作業やらアパートの手続きやらでお世話になった権能。ディオニュソスの力の一端を発動させる。
「我は心を汚す者。全てを忘れて? 僕は神の力をその身に移す事のできる一般人。
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