§15 知りすぎた者
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かないわ。」
エルと会話しているエリカは、とうとう「収拾がつかなくなります」という言葉の真の意味に気付くことはなかった。彼女は「ドニが権能を用いると黎斗を殺してしまう。そうなると後の事態の収拾がつかなくなる」と最後まで思い込んでいたが、エルの真意は「権能合戦になって最悪周囲が焦土になる」である。普段なら気付いたであろう違和感に気付けなかったのは、日常でどんくさいところしか見せていない(体力測定だと彼は学年最下位組の一人だ)黎斗がドニと互角に打ち合う光景を見ていたからだろう。ギャップが大きすぎたのだ。
「この事態とはなんですか?」
「あら、貴女気付いていなかったの? この周囲一帯に今結界が張られているのよ。効果は文明レベルの衰退。結界内では電化製品などが使えなくなるわ。せめてあの板だけでも破壊できればよいのだけれど、おそらく私たちに臨戦態勢のサルバトーレ卿の索敵能力を超えられるとは思えないわ」
「はい……はい、了解です。御武運を。……エリカさん、今の内容を念話でマスターに連絡しました。私たちの撤退後に破壊を試みるそうです」
あの”剣の王”を相手に戦いながら他の人間と念話をする余裕まであるなんて、そう思ったが疑問は呑み込む。今はそんなことを考えている時間も惜しい。
「……詮索はあとね。今は頼らせてもらうわ」
「参ったな。自覚してなかったけど相当鈍っているみたいだ」
全盛期なら、容易く勝てただろう。二刀流で互角、槍でなら快勝、といったところか。しかし、今の身体では動きが追いついてこない。模擬戦だけで実力の維持はやはり厳しいらしい。負けることはまずないが、楽に勝てる相手でもなさそうだ。
幾度目かの交差、自分の弱体化を目の当たりにし黎斗は密かに口を噛み締める。周囲から見ればこれは破格の大健闘。なにせ欧州最強の剣士と張り合っているのだから。
だが、これでは駄目だ。一番得意な槍でこの有様ではひどすぎる。圧勝とはいかなくても優勢に立ち回れるくらいの力量を有して無くてはこれからが思いやられる。黎斗の権能は安定した単体攻撃権能が存在しないのだから。邪眼や流浪の守護といった安定した守りはあっても攻撃は日中専用の広域殲滅だったり夜限定の邪気波動だったりして不安定だ。今回だって相手の後ろにある変な板を武術で破壊せねばならない。四人が撤退し、更に結界を破壊されればいかに天性の負けず嫌いとはいえ諦めるだろう。というか、諦めてくれないと困る。黎斗は殺人者になって警察の厄介になりたくはない。
「……そろそろいいでしょうか? 腕試しならこれで十分かと存じますが」
その言葉と共に、ロンギヌスを一閃。全盛期ならサルバトーレの持つ剣を吹き飛ばしたであろう一撃も、今の彼ではそこまでの成果を発揮できない。楽に止め
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