§14 魔王に立ち向かうのは勇者だけではない
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こっちの娘は諸事情で須佐之男命様の力を一時的に借りているだけの存在だ。あなたが誰か知らないけれど、その剣を仕舞ってもらおうか」
「……断る、と言ったら?」
「貴方、それなりの立場の人間でしょ? ここで倒すのは忍びない」
「いいねぇ。戦ってくれるなら、願ったり叶ったりだ」
黎斗の宣告に、ドニは獰猛な笑みを見せる。まるで、予想外の大物を発見した漁師のように。
「黎斗、貴方何馬鹿な事を言っているの!? その御方はカンピオーネの御一人、”剣の王”サルバトーレ卿よ。 いくら貴方が強くても、勝てる筈がないわ。お引きなさい!!」
エリカが何か言っているが、黎斗の耳には入っていない。万が一戦闘になった場合、権能を使わないで勝つのは如何に彼でも厳しいものがある。気を抜くことは許されない。
「……へぇ。僕がカンピオーネと知ってなお、立ち向かう意思を見せるか。なかなかどうして、面白い。君のその自信の根拠を見てみたい。ホントに、一手御手合わせ願えるかな? 大丈夫、勝敗にかかわらず彼女には手を出さないよ。まつろわぬ神でない上にそんなに強くないのなら戦う理由はないからね。あ、そうそうさっきの少年たちにも謝っておいてくれ。無闇に威嚇しちゃったからねぇ」
「……随分物分かりがよろしいのですね。カンピオーネの皆様は傍若無人と伝え聞いておりますが」
三人に謝っておいてくれ、などという殊勝な言葉に黎斗は感心を通り越して疑問を浮かべる。カンピオーネは自分勝手な連中だけだと聞いていたのだけれど。そう思った彼は一応敬語で返答する。カンピオーネと知らされてしまった以上、タメ口をきくのは不味いだろう。
「だってそりゃあ君、これから御手合わせ願う人に対して、最低限の礼儀くらいはねぇ」
「……戦うことへの拒否権は無しですか」
なるほど、たしかに自分勝手だ。こっちは良いと言っていないのにいつの間にか勝負すること前提で話が進んでいる。人の都合を全く考えていない。「願う」とか言っておきながら決定事項とは。
「しょーがないか。……ロンギヌス」
自身を呼ぶ声に呼応して、神殺しの槍が姿を現す。他に武器になりそうなのはビニール袋&たくさんの食べ物しかない。手の内を晒したくないが負けるよりマシだ。負けにいく考えを即却下するあたりなんだかんだ言ってもやはり自分はカンピオーネだな、と心の中で自嘲する。槍を取り出す黎斗を見て、ドニが眉を顰めるがそんなことは気にしない。
「では剣の王、サルバトーレ卿。お相手するは神殺しの槍とその所有者。神殺しの力、とくとご覧あれ」
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